75 / 87

第十一章・4

 思いがけないセクシャルな遥の言葉に、了はドキリとした。 「遥、やけになってないか? 自分は大切にしなさい」 「了さん、最近全然僕を抱いてくれませんよね? なぜですか?」  僕のこと、嫌いですか?  ぽろぽろと涙をこぼしながら訴える遥に、了は降参した。 「嫌いになんかなるもんか。私はね、航大くんに遠慮してただけだ」 「遠慮?」 「遥には、一番好きな人がいる。そう知ったからには、とても身体を抱けないよ」 「了さん……」  バスローブ姿の遥が、了の胸にすがる。  石鹸の香りとΩのフェロモンとで、了はのぼせそうだった。  脳をかき回され、熱い衝動が沸き上がって来る。  最後の理性を振り絞り、了は大切なことを口にした。 「でもね。私にとっての一番は、遥。君なんだ」 「えっ?」 「好きだよ、遥」  できれば、二番目から一番に昇格させて欲しい、とは言えなかった。  遥は一番好きな人を、失ったばかりなのだから。  さあ、と了は遥の肩に手を乗せた。 「お薬を、飲むんだ。フェロモンにイカレたαに抱かれたくはないだろう?」  しかし遥の返事は、キスだった。  背伸びをし、了の唇に口づけた。

ともだちにシェアしよう!