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体育祭実行委員会
早いもので4月も後半にさしかかっていた。
今日は第1回目の体育祭実行委員会の日。
「そんじゃ、また明日な」
「居眠りすんなよー」
「七海くん頑張ってね」
穂輔、千歳、依伊汰に見送られ、七海は実行委員会が開かれる3年生の教室へと向かう。‥が、その足取りは重い。
実は今日、学校の近くにオープンした最近人気のファーストフード店へ4人で行ってみようという話になっていた。実行委員会がある事をすっかり忘れていた七海は、ついさっきまで行く気満々だったのだ。話をしている時にたまたま通りかかった女子の体育祭実行委員、大森に今日が実行委員会の日だと教えてもらわなかったら、1回目からいきなりサボるところだったので、大森にはすごく感謝している。‥しているが。
(オレもあそこのハンバーガー食いたかったぁ‥)
トボトボと廊下を歩きながら、七海は心の中で泣いていた。依伊汰たちが日を改めて一緒に行こうと言ってくれたのがせめてもの救いだった。
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実行委員会が開かれるのは3年E組の教室。1年生の七海が上級生の教室に行くのはもちろん初めてのことだ。ドア越しに教室を覗くと既にかなりの人が集まっていて、いつもお気楽な七海といえど今回ばかりはさすがに緊張してしまう。まだ名前も知らない人ばかりだが、学年ごとに色が違うネクタイのおかげでかろうじて何年生かは把握できた。
窓際に同中の友人、川崎亮太がいるのに気づいて勢いよく駆け出した七海だっだが、ふと教壇の横で話をしている人物の姿が目に入った。青色のネクタイをしているので3年生だ。一度はスルーしたものの頭の中で何かが引っかかり、七海は歩く速度を緩めて必死にその理由を考えた。
「あーっ!」
ピタッと足を止め、振り返ってもう一度その人物の顔を見てみる。紫色の瞳には見覚えがあった。
「あの時の元気な人だー!」
「えっ?何??」
それは先日、部活見学をしたときに見たバスケ部の先輩だった。パズルのピースがはまり、嬉しくて思わず声を上げた七海。一方先輩はというと、現在の状況を全く理解できず相当混乱しているようだ。
わーわー騒いでいる七海に気づいた亮太が「こっちこっち!」と慌てて声をかけると、七海は先輩の慌てぶりには目もくれず、大きく手を振りながら猛スピードで亮太の元へ駆け寄っていった。
「譜久田の知り合い?」
残された彼は一緒にいた友人にそう声をかけられる。‥が、いくら考えても全く覚えがない。
「‥いや、全っ然わっかんねー‥」
突然目の前に現れ台風のように去っていった1年生の存在に、頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。
実行委員会が始まってからも七海は相変わらず落ち着きがない。会議を進行する教師が七海を注意する度に、教室からはクスクスと笑いを堪える声が聞こえてくる。
「お前の方が元気じゃん(‥っつーかうるさい)」
少し離れた席からその様子を眺める先程の彼は、ちょっと呆れたようにそう呟いた。
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