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ギブアンドテイク ※
体育祭が近づき、実行委員会の打ち合わせもいよいよ多忙を極めてきた。前回の集まりから、各担当に別れて当日のスケジュールについての話し合いが始まった。七海のグループは当日の競技担当で、選手の誘導から始まり競技中の審判、道具の準備・片付けまでしなければならず、実行委員の中でもかなり負担が大きい方だ。同じグループになった3年の修作がまとめ役となり、話し合いは順調に進んでいく。
「せんぱーい!オレ綱引き出る予定なんで、ここ抜けても大丈夫っすか?」
「えっ、あー‥うん、大丈夫。人数足りてっから」
「よかったー。そのあとの騎馬戦には間に合うと思うんで!」
まだ声変わりのしていない七海の少し高めの声は、教室の雑音の中でもとても目立つ。大きな目をキラキラさせて屈託のない笑顔を自分に向け、他のメンバーとも楽しそうに話をする七海を目の当たりにし、修作は少し複雑な表情を見せていた。
「んっ‥ふ‥」
「‥い、ちのせっ‥もう‥」
「いいよ、イって」
静まり返った空間に修作の短い喘ぎが微かに響いた。委員会のあと、この空き教室で“こういうこと”をするのはこれで三度目だ。
修作を口でイかせて当たり前のように白濁を飲み込む七海に、実行委員会の時のような表情はない。あそこにいた誰も知らない、修作だけが知っている七海の表情。
「‥‥なあ、ホントにやめる気ねーの?」
事が終わり、いつものようにさっさと帰り支度をする七海は修作にそう声をかけられた。先程から何度も同じ事を聞かれていたため、七海は少し不機嫌そうに言葉を返す。
「しつこい。ないよ」
「‥‥‥」
「なんでとか言わないでよ?うっとーしーから」
「そうじゃなくて‥‥」
「なに?」
言葉を詰まらせた修作を見上げると何か言いたげな表情を浮かべていた。七海が首を傾げて続きを促すと、修作は複雑な表情でボソっと呟いた。
「俺ばっかだから‥‥何か‥‥」
修作の意外な言葉に思わず手が止まる。大きな目をさらに大きくし、七海は興奮気味に修作の顔の前にグイッと近づいた。
「俺のもしてくれるの?」
そのまま唇が触れてしまいそうで、修作は思わず身体を引き、しどろもどろになりながら言葉を返す。
「えっ、いや、でもあの‥く、口では無理‥‥」
「最初からそんなハードルあげないよ。先輩ドーテーだし」
「‥‥」
ケラケラと笑いながらそう言い放つ七海は容赦ない。けれど、先ほどまでとは違う高揚感が自分の中で沸々と湧き上がってくることを、七海は自覚せざるを得なかった。
ふわりと身体の向きを変えて先程まで修作が座っていた机に身体を預けると、七海は修作の手を引いて自身の下半身に押し当てた。
「‥‥手でして」
「‥‥‥っ、くそっ」
かすかに微笑んでそう囁く七海を夕日のオレンジが染め、その妖艶さをより一層際立たせていた。
「‥‥ねえ、それ本気?」
「は?!」
ぎこちない手つきでベルトを外して自分のモノに刺激を与え始めた修作に、七海は再び容赦ない言葉を浴びせる。
「カマトトぶってんじゃないよ後輩にフェラまでさせてるくせにさぁ。さすがにオナニーくらい人並みにやってんでしょ?」
「カっ‥‥!それはお前が勝手にやったんだろうが!」
「もっと強くして」
生易しい刺激には満足できず、修作の耳元でそう囁くと七海は固く目を閉じた。
「‥‥あ、いー感じ‥‥」
「黙れよ‥‥」
「え〜?興奮してるくせに」
興奮しているのは自分の方だ。徐々に速くなっていく鼓動を修作に気づかれないよう、七海はワザと悪態をつく。 目を瞑ったまま深く息を吐くと、七海は頭の奥の深い部分にある北川の記憶を手繰り寄せた。
気持ちいいところを擦られ徐々に呼吸が乱れていき、先端を強めに刺激されると身体は小さく震え微かな声が漏れる。修作の手を上から握りしめると、七海はそのまま射精した。
「‥‥やればできんじゃん」
「ちょ、っと、これ、」
「舐めてくれないの?」
「バッ‥‥!絶対無理!!」
「情けないな〜」
そう言った七海は笑っていたが、すぐにその表情は複雑に歪む。
――やっぱりあの人とは違う
そんなの分かってしていることなのに、気づいてしまうとやはり虚しさしかない。
乱れた服装を整えると、七海は鞄から取り出したスポーツタオルを修作に放り投げた。 無意識だったが、その態度が良くなかったのだろうか。
「一ノ瀬、お前‥」
何か訴えかけるような修作の瞳に気づき、七海は慌ててスポーツタオルを奪い取ると、「またね」と言って教室を出た。
気づかれてはいけない
全て終わってしまうから
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