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第3話
「あー、じゃあ、トーストとカフェオレになにか混ざっていたとか…」
「昨日も同じものを食べました」
「だよな……」
「……俺、もうずっとこのまま……男に戻れなかったらどうしよう…」
項垂れる山田の頭をそっと撫ぜた。
いつもよりも小さな頭。髪の触り心地も違う。柔らかく、細い髪。
山田は栗色に髪を染め、少し長めにカットしているので、女の姿でも髪型に違和感はなかった。
「主任は……このままの方が、いいですか?」
ふいに呻くように山田がそう言った。
むくりと頭をあげ、座った目で俺を見る。
「俺が、女の方が、いいと思ってます? だから、こんな状況でもそんなに冷静なんですか?」
「ええっ?」
それは言いがかりというものだ。
騒いでいないだけで、むしろ途方に暮れていた。嘆く恋人をどう救えばいいのかと考えていた。
「やっぱり主任はちんこよりもおっぱいの方が好きなんだ…!」
「オイ待て、どうしてそうなる!?」
「なら、おっぱいとちんこ、どっちが好きなの!?」
「お…」
っぱい。
と反射的に口を滑らせそうになって、慌てて言い換える。
「お…ちんこ」
ちょっと上品な言い方になってしまったがギリギリセーフだ。…と思う。
恨みがましい目がじっとりと俺をねめつけている。怖い。迂闊なことを言えば末代まで祟られそうだ。
「うそだ! 今おっぱいって言いかけた!」
「……えぇぇぇ…?」
どうしろと。
「主任の浮気もの~! やっぱりちんこよりおっぱいの方が好きなんだ!」
男たるものそれはそうだろう。
もともと俺はノーマルだし。
ちんことおっぱいを並べられたらおっぱいに行く。だいたいちんこは自分にもついてるモンだからありがたみがないし。
そこはもう男のサガとしか言いようがない。
「おっぱいなんか滅びてしまえ! バルスバルスバルスーーー!!!」
アホだ。というかもはや支離滅裂だ。謎の呪文まで唱えだした。
……まぁ気持ちはわからんでもない。
いきなりちんこのかわりにおっぱいができたら俺だって多少は取り乱すだろう。――まず触って堪能するがな。そこはお約束である。
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