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第6話 赤
薄暗いアンダーグラウンドに、似合わない可憐な人影が、体を弾ませながら歩く。
「ふんふんふ〜ん♪おっしごっとおっしごっとー。」
静かなアンダーグラウンドの夜に鼻歌が響く。
治安が悪く暗いこの場所で、笑顔で歌を歌っている様が異様だった。
“月光”と呼ばれている黄色みを帯びた薄灯りに照らされて、金色の髪が白い肌になびく。
照らされた華奢なシルエットは、一つのビルの中へと消えていく。
人影の人物はビルに入ると古びたドアを蹴るように開ける。
「どぉ〜も〜♪おしごとしにきましたぁ!ってあれ。みーんなしんでるや。」
大きな丸い目をパチクリさせる。
薄暗い部屋の中には2、3人の男の死体が横たわっている。
「おしごとしゅーりょー!だれがやったんだろうねぇ?」
死体をツンツンと指でつつき、見た目相応の可愛らしい口調で独り言を呟く。
街頭の光に任せ、1人の男の死体を見ると、腹に一本線の切り傷が見える。傷をじっくりと見つめる。ギュッと瞳孔が開くと扇のように並んだ金色のまつげがばちばち瞬く。
「腸はきずなし。皮と腹膜だけきれーにかっさばいてるーっ!!すっばらしーおしごとっぷり!!」
傷をうっとりと眺めると、横たわっている男1人1人の死体を全て確認する。
「これも!これも!!これもっ....ッ!!!傷なしさくっといっぱつかみわざっ!」
はぁ...♡と光悦の表情をすると高鳴る鼓動を抑えながら、興奮と喜びに手が震える。
「だれなんだろうこんないいおしごとするひとは....。。」
身悶えしながら想像する。
好奇心で胸がいっぱいになる。
頭の中で自分好みに思い描いては顔が緩んでいく。
「だれかにころされちゃうまえに、はやくさがさないと....♡」
バッと立ち上がると扉を閉めることも忘れ、そそくさと死体現場を後にする。
先ほどよりも一段と体を弾ませ大きな声で歌う声が不気味に響いた。
「俺を探ってる女がいる??」
仕事でもなんでもない日に、洋二会いに来た。
最後の仕事は1週間ほど前だが心当たりはない。
レイと違って女と関わることもないし、友達とかいう平和ボケしたもんも持ってないし、女と言えば仕事で関わるレイの秘書マリア1人。
「何かの間違いだろ?」
「いや、間違いじゃねぇ。可愛い顔した華奢な女が『この辺で腹掻っ捌いてる達人誰ですかー?』って聞いてきたんだぞ??おっかねーよ。」
洋二は思い出すように宙を見上げると身震いする体を自身の両手で抱く。
「俺のことっぽいな。。まぁその言い方だと同業者か、敵討ちか....。」
どっちだとしても、俺を探してる奴にろくな奴はいねぇ。
「まぁ、気をつけろよ。俺は今までアンダーグラウンドで長年刑事やってたからわかる。ありゃイカれた人間の目だ...。俺はまだ死にたくないからこれ以上面倒ごと増やすなよっ!じゃあな!」
そう言って洋二は気さくに手を挙げると身を翻し去っていった。
それだけ言いにわざわざ...。お人好しってやつだ。
「って事で、なんか俺のことを探ってる女がいるらしい。一応報告。」
聞いたままをレイに話す。
殺し屋としては、レイが上司だ。
いつ命を狙われるかわからない仕事なだけに細かい報告は必須になる。
「わかった。警戒怠るなよ。こっちでも調べておく。」
「はーい。じゃあな。」
状況報告だけ終えるとセツナは気だるそうに電話を切った。
いつも寝ている寝室とは別の来客用とおもわれる綺麗に片付けられた少し豪華な寝室のベットの上で裸で寛いでいるのは、レイと秘書のマリアだった。
レイの厚い胸板に頬をぴったりとくっつけている。レイはセツナとの電話を終えると体を起こし始める。
「レイ、どうしたの?セツナから?」
マリアも一緒に体を起こす。
「そうだ。レイを探してる輩がいるらしい。早急に排除しないと。」
立ち上がろうベットの端に腰掛けたレイの頬にマリアはキスをするが、レイはキスに応えることなく立ち上がる。
「レイはいつもセツナの事になると、必死にね。」
マリアがチクリと嫌味を言うと部屋から出ようとしたレイはドアの前で一瞬ピタリと止まる。
すぐに何も無かったかのようにドアノブに手を掛けると、「円滑に仕事するために必要なんだ。」とだけ答える。
クローゼットの中の大きな洋服棚を割るように手を入れると棚は二つに分かれ、展示品のように綺麗に並べられたガンラックが現れる。
ガンラックには幾多もの種類の銃が並んでおり、その中からハンドガンと呼ばれる小さなサイズの銃を手に取ると手首を返しハンドガンを見つめ、両太もものガンホルダーに差し込む。
丁寧に並んだナイフの中から、手に馴染むものを選ぶとまたコートの裏に仕込んだ。
再度棚に手を掛けると棚は自然と閉じ、いつもの洋服棚に戻る。
マリアに目も暮れずいそいそと準備をするレイの背中に、裸に一枚バスローブを掛けたマリアが優しく抱きつく。
「いってらっしゃい。レイ。」
「行ってくる。」
レイは抱きしめてきたマリアの両腕を下ろすように自分から離すと、振り返ることなく部屋を出ていった。
一瞬チラリと見えたレイの横顔が、いつものポーカーフェイスとは違っていた気がした。
残されたマリアはシャワーを浴びるとまるで誰もそこに居なかったかのように綺麗にベットメイキングをして部屋を出る。
何もなかったかのような綺麗な部屋を見渡し、マリアはぎゅっと胸が痛んだ。
レイが情報を得たのは親しくしている情報屋の所でだった。
「また『赤い目のガキ探してる奴が居るか』って聞きに来たのか?」
情報屋をやっているマックは、レイが入ってくるや否やしかめっつらをする。
マックはもちろん通り名。
髪と目は薄い茶色で顔立ちも彫りが深い事からマックという通り名もしっくりくるものだった。
「そうだ。しらないか?」
そんなしかめっつらを見ていながら、反応もせず答える。
マックとレイは、10年以上の仲だ。故に気も使い合う必要もない。
「冷たいなーレイちゃんっ。俺泣いちゃうよ??」
鳴き真似をしながらチラリとレイを見るとレイは頭を抱えていた。
「マック。今日は急いでいるんだ。」
はぁ。。っとため息を吐くレイを見て慌てたように話し出す。
「ごめんごめん!!いたいた。そういう奴いたよ。ほんと何年ぶりだろうね。赤い目の20前後の男を探してるってね。」
思い出すようにマックが話し始めるとレイは身を乗り出して聞いた。
「どういう容姿のやつだ!」
レイの勢いにびっくりしたように一瞬身を引くもマックは続けて語り出す。
「こういう仕事なんでね、しっかり覚えてるよ。1人は190ぐらいの大柄の男でね。」
マックはソファから立ち上がると「こーーんなでっかい男だよ!」と手を自分の頭の上に伸ばす。
「もう1人は細身の170くらいの男だなぁ。そいつは、写真を見せてきたよ。子供の頃セツナちゃんの写真。『もう20歳くらいになってるはずだ。』って言ってたぜー?」
ボスッとまたソファに腰掛けると、タバコに火をつける。
うってかわってレイは写真という言葉にひどく反応を示し、動揺している様子だった。
「写真??なんでそんなものを....。」
レイが考え込んでいると、レイとマックに挟まれた机の上にマックが一枚ひらりと写真を置く。
「『お金いっぱいくれるなら探しとくぜー、顔わかるように写真くれよ』つって、くれたのがコレ。こりゃいつのだい?セツナちゃんにもこーんなかわいい時期あったのね。」
タバコを口の端に咥えたまま、セツナの幼い写真を見てにっこり微笑むと、ふぅーっと息と共に煙を吐き出す。
レイは煙を手で払うと「まさかセツナの情報売ってないだろうな。」と念を押す。
「レイが今まで俺に払った金より高い金出してくれたら考えたけど、まぁ10年積み立てたお金には及びませんわなぁ。」
ニッとレイに笑いかけるとさほどタバコが減らないまま灰皿にねじ込む。
「マブダチだしね。レイはどう思ってるか知らないけど。」
「金に汚い友を持つと苦労する。黙っててくれたんならよかったよ。」
そう言ってレイはいつも通りマックに丸めた札束を投げ渡す。
すかさず受け取ると「まいど♪」と嬉しそうにお札を数え始めた。
「俺はそいつら探しに行くから。もう出るぞ。」
と腰を上げるとマックはレイにカードを投げた。
鋭利な刃物のようにまっすぐ飛ぶカードを指で挟み受ける。
トランプのようなメモの部分に番号と容姿などが書かれていた。
「昔からの付き合いだ。俺のメモをくれてやんよ。俺が推察するに、男2人は別口だ。おそらく依頼主は別人。どっちもそれなりに金を使ってんだろうさ。両方相手にするのは部が悪い。気をつけろよ、レイ。」
「大丈夫だ。」
そう言って出ていくレイをマックは見送った。
[2時間後、某麻薬商人のアジト]
麻薬商人のアジトでは2人の男が警備という名の暇な時間を持て余していた。
事務所のソファにそれぞれ腰掛ける男達は、本を読んだりテレビを見たりとくつろいでいるところだった。
コンコンとドアをノックする音。
このアジトに今日誰か来る用事はない。
2人はテーブルに置いておいた銃を持つとノックの音のするドアに向ける。
鍵のかかっていたはずのドアがガチャリと当然のように開くとドアの後ろには肩くらいまで伸ばした髪を綺麗に切りそろえた金髪の女の子が立っていた。
歳も若く華奢な体と整った顔が目を惹く。
「ここにまちあわせをしに来たんだけど、入ってもいいですか?」
銃を構えた男達は呆気に取られていた。
「女がこんなとこで待ち合わせるわけないだろ!」
銃を突きつけたまま男達は動かない。
「ぼく、娼婦なんです。おかしいな...ここでおしごとって言われてきたんだけどなぁ。」
にっこりと微笑むと両手をあげて、持っていた小さなバックを男達に投げる。
バックを受け取った男はもう1人の男と目配せするとバックの中を覗いた。
中には注射器が入っていた。
「ぼくのところは、ドラッグセックスOKなんです。こっちから用意したものにかぎりますけど。今日のはあたらしいお薬なんで試してもらいたくてもってきました。」
男達は顔を見合わせると、バックを受け取った男がバックをテーブルに置き近づいてきた。
「丸腰かどうか確認する。服を脱げ。」
そういうと少女は微笑んだままするすると服を脱いでいく。
脱いだ服がパサリと足元に重なっていく。
下着も全て脱ぎ切ると、少女は性器にはついていないはずのモノがついていた。
彼は少年であった。
「お前...男だったのか!」
「やだなぁ。孕んだら商売になりませんから。僕のところはみんなおとこのこですよ。おしごとしにきたんですから、ヤらないとご主人様に叱られます。」
少年がそう告げると少年のバックから男が注射器を一本取り出し近づいてくる。
「毒でも入ってたら怖いからな。」
そう言って少年の腕に刺すと液を注入していく。
「このドラックは精力が衰えない、そして感覚が研ぎ澄まされていく新しいドラッグです。前流通していたものとは次元が違いますよ。ぼくが今から身をもって証明します。良かったら買ってください。」
そう言い切ると、少年足が震え始め床にしゃがみ込む。
熱でもあるかのようにはぁはぁと息を切らすと、とろりと溶けたような表情で男の顔を見上げた。
「...っもう効果が...っ、、はやく僕を犯してよ。」
うっすら微笑むと、少年の性器から糸を引きながらぽたりと雫が落ちる。
少年はゆっくりと手を糸を引いたそれにあてがうと手を動かす。
「っぁっ...っう...。」
1人で自慰をし始める少年を見下ろしながら、男は呼吸を荒くし少年の淫らな姿に自身のものも膨らんでいることに気づく。
男はすぐにドアを閉め鍵をかけると、少年の腕を引き先ほどまで座っていたソファに押し倒す。
「...っはやくちょうだいよ...。」
求めるように足を開く少年に応えるように男は服を脱ぎ始めた。
「おい、見張り中だぞ。」
先ほどまで銃を向けていた男は困ったように銃を置くとキョロキョロと周りを見る。
誰か他のものが戻ってくるとまずいと焦っていたのだった。
「毎日こんな暇な雑用押し付けられてんだ。こんなラッキーがあったっていいだろ。」
男は脱ぎ終わると、話も終わらないまま少年のヒクヒクと疼く小さなお尻の穴にねじ込んだ。
「んぁぁッッ...!!」
少年は激しく仰け反るとビクビクと震え、自分の腹の上に液を吐き出した。
「おいおい、そんなヤベーのかこれ?」
もう1人の男はテーブルの上に置いたバックの中に見える薬を気にする。
「...まだ、足りないよ?おじさんたちもソレ使いなよ。はやくもういっかいヤってよ...♡」
ゆっくりと半身を起こすとその小さな体を思わせないほど魅惑的な大人びた表情で相手の胸ぐらを引き寄せる。
すぐにもう1人の男に薬を取らせると、躊躇いもなく自身の腕に注射器を差し込んだ。
男は2分もしないうちにみるみる息を荒くすると、少年を抱え上げうつ伏せに体勢を変えさせる。
「...っん、やっと大きくなってきたぁ...♡はやくうごいてよ...おじさん。」
そう煽る少年の両肘を引き上げるように掴むと、乱雑に腰を振る。
「ハッ...ハッ...!やべぇ...もうイっちまいそうだ...!!!」
獣のように少年の白い尻に打ちつける。
「あっ!!あぅッ!!あっ!きもちいよおじさんッ...!!もっと奥までキてよッ!!♡」
少年は打ち付けられ、激しく出し入れされる度に腰を振り、ピンク色に滲む穴からは自身の体液と相手の性液を混ぜたいやらしい汁が滴る。
汁の音でグチャっグチャっと響く水音も、気持ちの良いところを突き刺す肉棒も、揺れるたびに擦れる乳首も、何もかもが快楽に変えられていく。
「あぁッ!アッ...!奥ぅっ...もっとッ...!」
ねだるようにお尻を振り、ソファに自身の竿の先を擦り付ける。
もはやイくという感覚はなく、ひたすら竿の先から液体が溢れ出る快楽を味わうだけだった。
今までの衝撃的な衝動的な一瞬で終わってしまうような快感ではなく、ただひたすら強い電流に痺れるような快感が全身を巡り続けている。
腰を振り続けている男も、少年の中に性液を流し続けていることに気づかないまま快楽の波に飲まれている。
薬の力で、硬く大きくなった肉棒が萎えることなく少年の前立腺を襲い続ける。
「あ゛ぁ゛っ!! っァ゛!!♡」
少年も目の前の快楽だけに意識が溺れていきそうになるのをグッと堪える。
その時、少年にだけそれは聞こえた。
誰かが静かに近づいてくる足音が。
「キたっ....♡」
ドアに目線を送ると同時に、割れるようにドアが蹴破られると影が一瞬で少年とまぐわう男心臓を後ろから突き、抜き取る。
瞬間、少年に血飛沫がかかると先程の朦朧とした表情から一変、少年はまるで虹でも見たかのようにはしゃぎ喜んだ。
「っははは!すごーい!!♡」
そのまま少年に倒れ掛かるように倒れた男の下から抜け出すと、もう1人の男は腹を押さえながら人影と一言二言話していた。
そしてすぐに心臓を突かれ溢れた血と共に地面に倒れ込んだ。
「ぼくがあいたかったヒトだ....♡」
白い肌も、金色の綺麗な髪も赤く染まった事など気にも止めず、少年はその人影を後ろから抱きしめた。
人影はすぐに少年の両手首を片手でまとめ上げ動けないように壁に押し付けると、「誰だ!」と首筋にナイフの刃をあてる。
人影の正体、それは仕事をしにきたセツナだった。
セツナは驚いた。少女のような顔をした細身の子供は、少年だったから。いやそれだけではない。その少年の目が自分と同じく、赤く輝いていたからであった。
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