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第30話
「うん、美味いなあ。さっきの夕飯もとても美味しかったけど」
ビール片手に僕の作った料理に沢村さんは舌鼓をうった。
「ありがとうございます...」
「こんなに料理上手で気遣いできる西垣くんと付き合ったら幸せだろうなあ」
「...そんな事ないです」
「どうして?」
ビールを持ち、若干、俯き気味の僕に、沢村さんが元気に尋ねた。
「その...僕も圭介とそんなに変わらないというか...ビッチなんです」
「西垣くんが?」
沢村さんが目を丸くした。
「はい...」
「乱交したり、日替わりで男と寝たりするの?」
「そ、そこまではないです」
ふふ、と沢村さんが笑った。
「ど、どうしたんですか?」
「真っ赤になって可愛いなあって思って。もし、西垣くんが言う通り、西垣くんがビッチだとしても、なんだろう、許せる気がするなあ」
「え...」
「パッと見さ、エッチな事は何も知りません、みたいな...ああ、ノンケって感じかな」
「ああ...」
良く言われる単語だ。
僕はビールを煽った。
少し眠くなってきたらしい沢村さんを空いた一室に案内した。
「西垣くんは寝ないの?」
「僕はもう少し、仕事があるんで」
「遅くまで大変だね...手伝うよ」
「いや、手伝って貰う仕事でもないですから」
そう言ったものの...。
ホームページを開き、ブログを書く僕に沢村さんは寄り添ってくれた。
「へえ...料理のレシピか」
「あ、気まぐれで色々書いてるんですが」
「仕事熱心なのは相変わらずだね」
ふと、キーボードを叩く指が止まった。
「あの頃から、西垣くんは人一倍、頑張っていたよね、必死な筈なのに、満面な笑顔で交渉する西垣くんには尊敬していたよ」
沢村さんはそう言った後、腰を降り、僕の唇にキスをした。
不意打ちなキスに咄嗟に僕も瞼を閉じた。
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