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第32話

朝、目を覚ますと沢村さんはまだ眠っていた。 部屋着で部屋を出ると、まずはミネラルウォーターで喉を潤し、顔を洗い、歯を磨き、朝食の支度に取り掛かった。 しばらくすると、先生が寝ぼけ眼で起きてきた。 「祐希、コーヒー...いい、自分で煎れる」 いつも僕が朝イチのコーヒーを煎れるのだが、先生は珍しく自分でコーヒーを煎れた。 普段なら、おはようございます、と声を掛け、おはよう、と返ってくるが、僕は挨拶をせず、顔を見合わせる事なく、朝食の準備。 「おはようございます」 あくびをしながら圭介が起きてきた。 「おはよう、圭介。お前もコーヒー飲むか?」 「あー、俺、コーヒー苦手で」 圭介が苦手だとか言っていた癖にヘラヘラしちゃって。 淡々と朝食作りしながら、朝から気分が悪い。 続いて、沢村さんが起きて来るなり、僕の背後に立った。 「おはよう、祐希」 「おはようございます、沢村さん。よく眠れました?」 僕は沢村さんに満面な笑顔を返した。 「お陰さまでよく眠れたよ。いい匂いだな」 「すぐ出来ますから、座って待っててください。あ、歯磨き。予備の歯ブラシありますからちょっと待っててください」 僕が沢村さんに未開封の歯ブラシを渡すと、 「祐希は本当に気が効くし、律儀だね、ありがとう」 「いえ、そんな事ないです」 そうして、沢村さんは洗面台へと消え、背後から先生と圭介の声がした。 「広隆さん、俺の絵、いつ描いてくれますか?」 「そうだな、今日でも描こうか」 「やった!ありがとう、広隆さん」 ...僕だって、先生と呼んでいるのに、名前呼び、しかもなんだ、最後、キスしたような音がした。 沢村さんを誘惑して、圭介を追い出すとか言ってたのは何処の誰だっけ? 珍しく、僕と先生は食事中も、先生のお代わりは先生にして貰い、険悪だった。

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