2 / 96

prologue †…dream(2)

 そして目の前に現れたのは、漆黒色をした、大人ほどもある大きな身体をした狼だ。  宝を射貫くその瞳はブルームーンのように青い。  驚くほどその瞳は澄んでいて、見ていると吸い込まれそうだ。  宝は抵抗するのも忘れ、見惚(みと)れる。  しかし、それもほんの束の間に過ぎない。狼は口の両端にある鋭い犬歯を剥き出しにして呻っている。  どう見ても今のこれは友好的ではない。  狼は宝を食料とでも思っているのだろう。  前足が捕らえた獲物を逃がさない。宝を押さえつける前足のその爪が両肩に食い込み、宝が着ている真っ白なシャツが赤く染まっていく……。  このまま、自分は狼に殺されてしまうのか。  ブルームーンの瞳が、恐怖に戦慄(わなな)く宝を写し出す。  そして狼は大口を開け、勢いよく宝の喉元に噛みついた。

ともだちにシェアしよう!