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椎名さんが心配です。(4)

「……わかった。俺がいなくてもしっかり進めておけよ。顧客は取り逃がすな」  ふたたび沈黙が流れ、ややあって丞は渋々頷いた。  しかし彼はどうやら一部の人間が気になるらしい。彼は目をつり上げ、右隣に座っている斎に命じる。 「はいはい、わかってるって」  対する斎は――といえば、いつも通りのふたつ返事をするばかりだ。その斎にいささか不安を抱きながらも、丞はおぼつかない足取りでオフィスから出て行った。  そんな丞の後ろ姿を気が気ではなく見つめているのは宝だ。  できることなら家まで無事に帰宅できたかどうか送ってやりたい。しかし、プライドが高い彼のことだ。きっと自分一人で帰れるとそう言うに決まっている。彼は宝の心配を快くは思わないだろう。 「……気になる?」  宝が丞の姿が消えたド唯一の出入り口を見つめていると、阿佐見が訊ねてきた。

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