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椎名さんが心配です。(6)

 ちらりと阿佐見を見上げると、彼女は依然として微笑んだままだった。  阿佐見の申し出は嬉しい反面、機嫌を損ねてしまうことが苦しくて、それでも丞の体調が気になって仕方がないのも事実だ。 「……はい」  ややあってゆっくり頷く宝に、阿佐見はぱちりと両手を合わせた。 「じゃあ決まり」 「あ、枇々木が行くなら俺もリーダーの見舞いに行くぜっ!」 「あんたは居残り。リーダーの分もきっちり働いてもらうんだから」  斎も宝に続いて見舞いに賛同しようと手を挙げる。しかし、阿佐見によって一蹴されてしまった。  どうやらこのチーム内でも阿佐見は相当な権力を持っているらしい。その日の斎はいつになく不満たらたらで、パソコンのモニターに向かって何やら不服を言い続けていたのは言うまでもない。  阿佐見は斎に対してのみ、一切の手加減をしない。それは同期であるが故なのか。宝と田牧は二人のやり取りにただただ苦笑いをするばかりだった。

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