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異変。(2)

 都会の喧噪にはないその静けさが、宝の恐怖心を(あお)ってくる。  果たして丞は本当に、緑が鬱蒼(うっそう)と生い茂る森の中に住んでいるのだろうか。  宝は阿佐見からもらった地図を頼りに、道無き道を懐中電灯で照らして進んでいく。  するといくらかしない内に視界が開けていく。  ややあって一軒の大きな屋敷が見えてきた。  そこが丞の家だ。  やはりこの家も昔から存在するのだろう。外観はどこか年代を思わせる。  丞の家は宝が住まわせてもらっている家と同じく一戸建てには変わりないが、古民家というよりは屋敷のように見える。  古びた外観は(つた)で覆われていて、バルコニーがある二階まで浸食している。  この屋敷もまた、丞の外見と同じで、どこか他者を寄せ付けない雰囲気があった。

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