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丞の正体。(2)

 気がつけば宝は倒れ込み、狼に取り押さえられていた。  夢の光景そのままだ。  鋭い犬歯を剥き出しにした大きな口が宝の喉元を捉える。 (殺される!)  宝が覚悟したその時だ。  耳を(つんざ)く銃声が聞こえたかと思うと、同時に狼が甲高い鳴き声を上げ、宝から離れた。    身軽になったその身体を起こし、入口の方を見やれば、そこには田牧が立っていた。  彼はどこから持ち出したのか、熊撃退用のライフルを手にしている。  そのことから、宝は田牧が狼を撃ったのだと理解した。  しかし、この狼はただの狼ではなく、丞だ。  そのことを知らない田牧は、慣れた手つきでまたもやライフルを構えた。 「枇々木くん、大丈夫かい? 次の一発で仕留める」  そう言った田牧に、しかし宝は彼に向かって飛び出した。 「何をっ!!」 「ごめんなさい。でも、殺しちゃだめなんです!!」

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