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丞の正体。(5)
肺は萎んだり膨らんだりを繰り返し、開きっぱなしの口からは苦しそうな声が放たれる。
「ああ、どうしようっ」
このまま放って置いては彼が死んでしまうかもしれない。宝は首元のネクタイを外し、傷ついた前足を縛った。
仮に、このまま血が止まったとしても助かるという保証はない。
血を流しすぎているのかもしれない。それには輸血が必要だ。
しかし彼は人間であり、同時に狼でもある。いったい誰に診てもらえばいいのだろう。
それに、ここは山奥で助けを呼んだとしてもすぐに来てくれるかどうかもわからない。
『帰れ!』
丞の言うとおり、そのまま帰っていれば、自分は彼に襲われずにすんだし、銃に撃たれなかったかもしれない。
「……っつ」
宝はやるせなさに唇を噛んだ。
自分がここまで考えなしで、浅はかな人間だとは思いもしなかった。
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