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丞の正体。(8)
「信じられないだろう?」
肩をすくめ、宝の感情を代弁するかのように斎が阿佐見に続いて話す。
信じる。といえば嘘になるが、二度にもわたって狼が人間に――あるいは人間から狼に変身する光景を見たのだ。もう信じるしかない。
「いえ……」
宝は小さく首を振った。
「やっぱりお利口さんね、宝ちゃんは……」
「それでどうするんだ? こいつは放って置いてもすぐ回復するぜ?」
未だ狼のまま倒れている丞を指差し、斎が訊ねる。
「でも。傷、とても痛そうだし……」
たとえ傷が癒えるとしても、それでも自分の所為で彼は傷ついたのだ。それに、本当に回復するのかも判らない。
このまま放って置けば、もしかすると彼は死んでしまうかもしれない可能性だってある。
自分が出来ることの方が少ないが、それでも何かしらの役に立つかもしれない。
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