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目覚め。(1)

 †  陽が昇っている。  椎名 丞が目覚めたのは午前七時少し前だった。  仕事がある普段なら寝坊だが、今日は幸い土曜日で、明日日曜日と共に世間一般と合わせて仕事は休みに設定してある。  ベッドから起き上がれば、見えるのは腕に巻かれた包帯だ。 「包帯?」  丞はひとり、だだっ広い殺風景なその部屋で呟いた。  たしか自分は昨日、満月の日で、魔力が格段に上がっていた。魔力を抑えるため、ほぼ本能的に体力を削り、その結果、高熱を出した気がする。  仕事は大事を取って半休にして、帰宅したところまでは覚えている。  しかし、自分はどこで怪我をしたのだろう。  しかも、なぜ自分はこれを巻いているのだろう。ウェアウルフは治癒能力に長けている。こんなものは不要だ。 「おっはよう、リーダー。気分はどう?」 「別に変わりない。いつも通りだ」

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