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胸の痛み。(2)

「君は俺がウェアウルフだと知ったんだな……」  ぽつりと呟いたその声は、どこか悲しそうだ。  やはり、彼は正体を他言するとでも思っているらしい。  それを確かめるためにわざわざ嫌いな自分の家にやって来ただろう。  けれど宝にそんなつもりは毛頭ない。  仮に彼の正体を明かしたとして、いったい何になるというのだろう。好きな人を困らせても少しも楽しくはない。  宝は丞に安心してほしくて、口を開いた。 「はい。あの、でも安心して下さい。椎名さんたちのことはけっして他言しませんから」  声は夜通し泣いたおかげでしゃがれている。  泣いている理由を詮索されるのが嫌で、だから喋らなかったのに……。  けれども腫れたこの目を見れば誰が見ても、宝が泣いていたのは一目瞭然だ。  しかし、丞は宝が泣いている理由を知らない。  自分の恋心を打ち明けなければ――永遠に……。

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