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胸の痛み。(4)
丞のそういうところも好きになった理由ではあるが、今の宝にとって、彼の姿勢がどれほど厄介なものかを彼は知らない。
どうか自分の事は放って置いてほしい。
そしてこのまま、何もなかったことにして、また思う存分泣かせてほしい。
「椎名さんには何もされていませんよ」
事実を告げても丞は自分を好きになってくれないことは知っている。だから宝は、『何も無かった』と嘘をついた。
「それよりも身体の傷は平気ですか?」
宝が訊ねれば――。
「……ああ、俺は……」
丞は答える。
「よかった。俺の所為で怪我をさせてしまったから、どうしようかと思っていたんです。安心しました」
じゃあこれで。とそう言って、宝は玄関のドアを閉めようと動いた。
丞は宝の拒絶を感じたのか、それとも嫌いな自分とこれ以上何も話すことがないと思ったのかもしれない。身を引いた。
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