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秘恋。(2)

 自責の念に捕らわれている宝はむせび泣く。 「……それは本当なのか?」  彼は、ぽつりと呟いた。  そして次の瞬間、泣き崩れた宝の身体が力強い腕に包み込まれた。  宝は突然の出来事に息を詰める。  この力強い腕は知っている。  宝を抱いた、あの腕だ。 「俺は化け物だ。まさか両想いだったとは思いもしなかった。どれだけ君の事を諦めようと努力したか……」 「!?」  果たして今、彼は何と言ったのだろうか。  流れ続けて止まなかった涙は、もう止まっている。  宝が顔を上げると、丞の腕はいっそうきつく抱きしめた。 「……しいな、さん?」  これは夢だろうか。  だって彼は自分を嫌っている、筈だ。  どんなに願ったって彼からの愛はない、筈だ。  それなのに、自分を抱きしめる丞はとても苦しそうにしている。 「好きだ。いつも君を見ていたんだ。初めて見た時から目を奪われて……可愛い子だと思っていた」

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