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夢のあと。(3)

「本当にいいのか?」 「ん、お願い。俺も貴方と同じ時の中で生きたいんだ……」  未だ躊躇(ためら)う丞に、しかし宝は大きく頷いた。  その目は決意を持ち、希望という光で満ちている。  宝は普段、控え目な性格で、自ら進言することはあまりない。けれども実際は、その胸の奥に秘めた強い意志を持つ。そういうところがまた、丞が彼を好きになった理由のひとつでもある。  そして自分の気持ちを押し殺してまで丞を気遣う。そんな健気な一面もあった。  なんとも可愛らしいのだろう。  丞の中で、宝への慕情が一気に増す。 「宝……」  彼の顎を持ち上げ、自らの薄い唇で彼の唇を塞ぐ。 「んぅう……」  口内に舌を忍ばせ、魅惑的なその赤い舌を吸ってやれば、悩ましげな声が弾き出される。  丞は、赤い唇を幾度となく啄み、戯れる。  その度に、リップ音が生まれ、そして消えていく。

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