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犬 13
自転車はドクターが家に運んでいるそうなので、男とタクシーを拾って帰ることにする。
タクシー代は悪いけど男にだしてもらう。
だって俺、マトモに歩けないから。
どんだけヤラれたんだよ。
そして、恐ろしいことに、着替えを手伝って貰ってた時、男に腹を撫でられているだけで軽くイったのだ。
身体に余韻が。
男のがそこまで入ってたのが思い出されちゃって。
「意識を無くしてても身体が反応しまくるから止められなかった」
という男の言葉は嘘じゃないのかもしれない。
どうなってんだよ俺の身体!!
要らないだろ、そんなモロ感ボディ!!
しってる?
射精なんかほとんどしなくてもイけるんだぜ?
男に突っ込まれる時は、イクのはもう射精じゃないし、精液じゃない液体を吹き出してんの。オレのちんぽ。
意味分からん
ヤバすぎる。
「マジか。エロい、たまんねぇ」
物凄い男はに喜ばれているけれど。
泣きそうだ。
とんでもないエロボディにされたところで、俺は、だ。
ただの平凡普通の大学生なんだ!!
この男以外に需要などない!!
こんな身体、困るんですが!!
とにかくなにか着て帰るために、俺より少し背の高いドクターの服を借りた。
パンツも新しいのを男が見つけてきた。
派手だが。
なにかこれ。
こんなパンツ男が履くの?
布地少なくない?
トランクス派としてはなんか、なぁ。
仕方ない。が、男が喜んでいる。
「脱げせてぇな。こういうの買おうぜ」
男がパンツの上から触りそうになるから手を叩いた。
当分禁止だエロいこと。
コイツ、意識なくなった俺でたっぷり楽しみやがったからな。
俺が、意識無くしても感じてたとしても、だ、
「さっさと手伝え!!」
俺は怒鳴り、男は大人しく服を着る為身体を支えるのを、手伝った。
そして横抱きにするというのを拒否して、でも、ほぼ、ささえると言うよりは、抱えられるようにして、でも、自力で、歩いて、タクシーにのり、帰ってきたのだ。
長屋の前にドクターの車が路駐していた。
まあ、ドクターの車だと分かっているから、通報されることはないだろう
近所のじいちゃんばあちゃんを、男以上に籠絡しているのはドクターだ。
男の命令で、ご近所全員温泉につれていって、ガイドまで、させられたのだ。
温泉の余興で演歌に軍歌に民謡まで、歌ってみせたらしいとも聞いている。
今では近所全員、気難しいじいちゃんでさえ、ドクターのファンなのである。
詐欺師ってヤバい。
本物の悪者なのに。
「詐欺師は何でも出来るからな」
と男はドクターをいつでもいいように使いまくっているのだ。
だが、確かに、ドクターは何でもできる。
玄関をあけ、旧い家なので高すぎる段差を這って上がり、俺は内藤の元へ向う。
大丈夫か!!
詐欺師の餌食になってないか!!
だが、居間の襖を開けて安心した。
内藤はクークー寝てた。
畳の上で丸くなって。
毛布がかけられていた。
スマホを握っているから、俺の連絡を待ってる内に寝てしまったんだろう。
1晩中待っててくれたのか、内藤。
さすが親友だぜ。
そして、その隣りで、異様にやつれて、頭を抱え、膝を胸につけて座っているドクターが、溜息だけをついていた。
何もなかったのはわかった。
いや、何も出来なかったのが。
「どうした、ポケットに入ってるコンドームの使い道はなかったのか?仕事で使うおクスリももってきてるんだろーがどうせ。ヨガってどんな嫌な男でも欲しくなるようなのをよ」
俺の後をおとなしくついてきた男が、ドクターを見て面白そうに笑った。
何!!
そんなの用意してんの知ってて、おまえ!!
内藤良く無事で!!
ドクターは顔をあげた。
苦悩がすごい。
わるだくみをしていたのは確かだが、出来なかったのはわかった。
「良心が邪魔をして出来なかったわけじゃねぇよな。てめえに良心なんてものはねぇ、したくてしたくてたまんなくて、でも出来なくて、朝まで苦しんでたんだろ」
男は本当に楽しそうだ。
ドクターの様子が面白くて仕方ないらしい。
「お前、そんなヤツを内藤に!!」
俺は怒る。
俺の親友を毒蛇に!!
内藤はむにゃむにゃ言って寝返りをうった。
内藤は1度寝るとなかなか起きない。
無防備この上ない。
「出来ねぇよ。コイツには無理だ。詐欺師だからな。一流の。コイツは本物には手を出せねぇ。偽物を本物に近く見せることはできても、コイツには本物は扱えない、だからこそ詐欺師だ。コイツにゃ、内藤は本物だ。触ることも出来ねぇよ」
男はつま先でドクターを軽く蹴りながら言った。
ドクターは何度も頭を振る。
ちょっと泣いてさえいた。
何度も何度も、そうしようとしたのは分かった。
本当に、出来なかったのだ。
良く分からんが助かった。
「ドクターに帰ってもらえ」
俺は男に言ったので、男はドクターを担いで出て行った。
ドクターは抵抗しないでしくしく泣いていた。
マジ、何にも出来なかったんだな。
良かった、良かった。
詐欺師にかける同情などない。
ドクターを車の側に捨ててきた男が戻ってきたので、冷蔵庫の作りおきをだすように頼む。
俺はなんとか台所の椅子に座って、味噌汁をつくる。
飯にしよう。
とりあえず、飯だ。
男が欲しそうなので、ジャコ入の卵焼きも焼くことにした。
トマトとナスとタマネギをたっぷりのオリーブオイルでクタクタになるまで炒めて塩コショウしたのを作り置きにしてる。
これ、ご飯に載せてたべるだけでも美味いので、レンジで解凍したごはんに載せよう。
シャケも焼いておく。
俺と内藤と男の分だ。
そして、卵焼きと味噌汁。
昼飯だか、夕飯だか、朝飯だか、わからないけど。
とりあえず、俺は、親友と伴侶と飯を食う。
男がとても嬉しそうだ、
この男は俺が作ったものしか食べないのだ。
それが可愛いと思うから。
俺もどうかしてる。
だけど、いいか。
そう思った。
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