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番外 内藤くんとドクター1

オレはワクワクしていた。 内藤くんを抱く。 そう決めていた。 邪魔者2人は追い払った。 男は朝まであのガキを鳴かせまくるだろう。 どこがいいんだがわからないが、あの男はあのガキに惚れ込んで何もかもを捨ててきたのだ。 それだけのために、おっと、ここからは思い出してはいけないことだ。 記憶してはいけないこともこの世の中にはある。 忘れろ。 男がお楽しみのように、オレも楽しもう。 内藤くんで。 あのガキと内藤くんが自転車でお出かけした先で、内藤くんがジャージを脱いだ上半身裸の写真と(隠し撮りした)、内藤くんがガキの家に忘れていったTシャツ(おなじのとすり替えた)をオカズにオナニーしてる生活とは今日でおサラバだ。 身体から堕す。 仕事で散々やってることじゃないか。 男でも女でも、オレのためになんでもしてくれる可愛い穴にしてきたじゃないか。 肉体が目的じゃなく、さらにでかいことに利用するためにそうしてきた。 全員、今でも騙されたことにすら気づかず、オレを恋しがっているはずだ。 オレは一流だからな。 でも、自信がなかったから薬も用意した。 車に仕事道具は常においてある。 まあ、クスリまで使うことは、仕事でもあまりない。 クスリは一時しのぎだから。 クスリだけじゃダメなんだ。 だが、中の中まで愛してやれば、薬がきっかけでもちゃんと堕ちる。 愛をあたえてやれば。 いつもなら、その愛は偽物だが今回は本物だぞ。、 だから、大丈夫。 大丈夫だって。 内藤くんは、オレを好きになってくれる。 オレは何度も何度も自分にいいきかせた。 車を貧乏くさい長屋の前に止めた。 こんなとこ大嫌いだ。 「あら、お兄ちゃん、元気?」 車から降りたら声をかけられた。 ビンボくさい婆さんだ。 大嫌いだ。 でも笑顔で手を振る。 名前も年齢も家族構成も全部頭に入っている。 どう言えばよろこぶのかも。 「お孫さん、見ましたよ!!」 売れない芸人をしている孫について言った、ほら、それだけで喜ぶ。 つまんねー芸人だ。 死ぬまで、売れないだろうな、とは言わない。 楽しい気分にさせて、幸せにする。 そんな相手を嫌うヤツなどいない。 喜んでなんでもしてくれるようになる。 それが、1番大切なのだ。 騙すのは三流。 気づかせないのは二流。 一流ならば、よろんこんで全てを差し出させる。 オレは一流なのだ。 手を振って婆さんと別れた。 内藤くんとこの先上手くやっていくためにも、ご近所の協力は必要だ。 内藤くんはこの家によく来てるし、近所の年寄り共と交流もしているからだ。 ささいなことにも気を使わなければならない。 オレは緊張しながら、古くさい、今どきこんな家あるのかと思う長屋のドアを叩いた。 インターホンすらない。 「すみません!!」 声をかける。 壁が機能を果たしてないので、ちゃんと聞こえるのだ。 内藤くんをイカせまくることになるが、口を塞いだりしてする必要はあるな。 だが、それもエロい。 ヤル気が出てきた。 「すみません、今、この家の人は留守なんです・・・」 内藤くんがそう言いながら出てきた。 オレを見上げる。 内藤くんは少し小柄で細い。 そこがいい。 内藤くんは綺麗な顔なのに地味。 そこがいい。 内藤くんはオシャレじゃない。 微妙にダサい服を着ている。 だが、そこがいい。 おそらく内藤くんのストーカー達となら、内藤くんについて1晩中語り明かせるに違いない。 内藤くんは。 綺麗なだけじゃない、誰かれにもウケるわけじゃなくて、内藤くんは内藤くんだから、いいんだよ!! 見上げた時の首筋の綺麗さとか、何となくドアにもたれてる腕のセクシーさとか、無防備なハーフパンツとか、全部全部。 綺麗なのに良く見ないと綺麗さがわからない顔とか。 見れば見るほど綺麗なのに、地味ってすごい、そこがいい。 だがこれを分かりあえる連中は排除してまわっているし、時に叩きのめしているので、語り合えることはないのは皮肉だ。 「何?2人ともいないけど」 オレだとわかった瞬間の冷え込む眼差しと、声もすき。 綺麗だ。 その冷たい眼差しが星のようだ。 その声も氷の結晶。 「いや、オレは2人に、頼まれて」 ごにょごにょ言葉が出てきて、自分でもぼう然とする。 この自信の無さげな声はだれの声だ。 オレの? オレのなのか? 思わずポケットの中のコンドームと媚薬を握りしめる。 内藤くん相手にはセーフセックスだ。 納得してからたっぷり種付けはしたい。 内藤くんには。 そのために、今日は頑張らないといけないのに。 またオレとしたいと思って貰えるように。 「頼まれた?」 内藤くんの警戒が解ける。 内藤くんは親友であるあのガキはともかく、あの男も信用はしているのだ。 あの男と内藤くんの間にはなんらかの同盟関係はあるらしい。 よく分からない間柄だ。 「そうそう、事情を説明してくれって言われたんだよ。それから、彼の自転車をとどけにきた。自転車持ってくるから上がっていい?」 オレはなんとか笑顔を貼り付けた。 内藤くんは考えこんだがゆるしてくれた。 内藤くんと一つ屋根の下に。 もう勝ったも同然だった。 あの男も。 分かってるくせに、なんでオレを来させたんだろうな。 内藤くん。 内藤くん、たっぷりかわいがって上げるからね。 オレは車のトランクから自転車をとりにいきながら、スキップしていたのだった。

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