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初恋 8

「ナツ、こっちは俺の。伴侶、だ。まあ、なんだ。将来的には正式なバートナーになる。結婚的な?まあ、俺まだ学生だからまだ、あれなんだけど」 俺はナツに男を紹介した。 ナツがポカン口を開けた。 おっ? ナツ、こんな顔するんだな。 まあわかる。 わかるよ。 幼なじみの、しかも自分に惚れてた奴が、パートナーとして紹介したのが、巨体の顔にまでタトゥーがある男だ。 ナツも普通じゃない人生を送って来てるだろうが、俺もどこかでこうなった。 「もう驚くことなんてないとおもってたよ」 ナツの言葉に、そこまでか、とは思った。 ドクターはやはりいい仕事をしてくれた。 ある店にかくまわれていたナツを回収してくれたのだ。 そして、ものすごく怒りながら、ナツの肩の傷も治療してくれた。 そして、隠れ家も提供してくれている。 便利だな、凄腕詐欺師って。 先ほど、俺を罵りながらドクターは帰って行った。 隠れ家は前の高そうなマンションではなく、繁華街のスナック等が立ち並ぶ中に何故かあるようなアバートだった。 窓の外から色んなネオンの色が差し込んで、街の音がしてる。 酔っ払いっの声。 喧嘩の声。 何故か犬の鳴き声。 俺の街と似てた。 なんかホッとした。 多分、ナツも。 俺はあの橋で、飛び降りる前のナツにある店の名前を言った。 そこは俺たちの街から出てきた者が集まるBARで、俺も顔位は出してる。 俺は酒は飲まないけど。 まあ、互助会みたいなものだ。 ナツもあの店を知ってると思った。 ナツは短い期間だったけどあの街にどっぷり浸かっていたからだ。 そこで、俺の名前を言えばいい、と。 助けてくれる、と。 そこでは、俺の守護の力が効く。 俺にはなぜか沢山の人達の守護があるから。 その店は、俺たちの街だから。 俺たちのルールが生きている。 街の人間を売らない。 そして、俺は。 隠れ家でナツと三度目の再会をして。 今度はナツと男を引き合わせたのだった。 「名前は?」 ナツは男にきく。 「知らねぇ方がいい」 男の低音が響く。 ものすごく素っ気ないが話し方だが、お行儀はいい。 内藤に対する態度よりは少しマシか。 ナツは呆然と焔に焼かれているような男の顔をしばらく見ていた。 「なんで?なんで?カタギじゃないだろ、コイツ!!なんで!!!!」 ナツが突然切れた。 え、どうしたの。 ナツ? 「あたしはあんたが、あんたは普通で、幸せで、真っ当な道を歩んでるって信じてたんだよ!!あんただけは!!!なんで?なんで?大学生で、ちゃんとしてるんじゃないのか?コイツ筋金入りだろ!!!!あんたはダメだ、あんただけは、明るい場所にいないと!!」 ナツがわめく。 こんなナツは初めてすぎて、俺はおどろく。 「オレはもうカタギだ。オレは主夫だ!!!」 男が怒鳴りかえした。 え、何? 何お前もキレてんの? 「うしろ暗いところがあってサツに追われてるのはてめえだろ、オレはちゃんとしてるからな。キレイに全部過去は洗ってあるからな、どこにだって出れる。結婚だってできるようにしてあるからな!!」 男が自慢げに言う。 結婚。 そら、そのようなつもりでしたけど。 結婚したくて、過去消してきたの? それは初耳ですが。 「過去を消しされるのはお前がヤバさのレベルが凄すぎる奴だからだろが。そんなマトモじゃない悪党とだなんて・・・ありえない!!」 ナツが壊れた。 悲しげに泣いてる。 なんで? 「オレはなご近所付き合いからこなして、もうこいつ親友にまで公認だし、コイツのご両親と妹さんにも認めてもらう覚悟はある!! もう既に内縁関係だ!!毎晩コイツを気持ち良くして、幸せにしてる。しゃぶって舐めて、今日だってケツでたくさんイかせてからここに来てるからな」 男は自信たっぷりに言う。 なに言ってんだ、このバカ!! いや、でも。 俺もお前がそこまで社会的に公認の立場に拘っていたとは知らなくて、今、驚いてるよ。 「なんでだよ!!なんでコイツなんだ?調教されて、性奴隷にされちゃったのか?」 ナツが泣きながら男を指さすので、俺は慌ててその指を掴んで下ろした。 ナツ、なにいってんの? 調教って。 それに人を指さすの良くない。 ね? 「なんでそんな女の手を握るんだ!!」 男が怒鳴る。 ああ、もう、なにがなんだか。 「約束したよね!!危ないことはしないって!!」 そこで突然、隠れ家のアバートのドアが叩きつけれるように開いた。 帰ったはずのドクターと一緒に内藤が立っていた。 ドクターは内藤をみつけて、俺の話を餌にして内藤をここに引きずりこんだのだ。 俺に対する嫌がらせと、内藤と少しでも一緒にいたい下心で。 内藤はガチギレである。 いや、内藤。 お前と約束する前に、もうナツには言ってしまっていたんです、では許してくれないよね。 「俺は伴侶だ。ちゃんとしたな」 ナツにマウンティングを取っている男。 「隠れ家とか、闇医者とか、なんであんたがそんなことに」 何故か悲しみ泣く初恋の人とか。 「なんで危ないことするんだよ!!しない約束だろ!!」 キレる親友とか。 俺は消えたい。 と初めて思った。

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