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悪魔 6
「よし来た、さすが内藤!!」
俺はガッツポーズする。
さすがだ。
内藤はある種の人間を引き寄せる。
ヤンデレストーカー製造機だ。
欲望に忠実なタイプの人間ほど、内藤に引かれてしまうのだ。
自己中であればあるほど。
破滅的なまでに欲望に忠実なストリートの子供達ならば、内藤に惹かれてしまうのはわかっていた。
まあ、こういうのは良くはないのかもしれない。
今まで他人をどう扱っていたのかを忘れたかのように、彼らは内藤に惚れ込むし、内藤はそんな彼らを好かれたなら好かれた分だけきらうからだ。
「自分が気に入っている人間にだけ見せるものがその人間の本質じゃないだろ」
内藤は自分の欲望の為に人間を利用したりする人間がこの世で1番嫌いなので、自分にとってその人間が誠実であったり、本気であることは何の意味もないことなのだ。
「人の外側の皮だけ見て、好きだなんて愚かすぎる」
内藤は中々辛辣なのだ。
だから内藤は死ぬほどドクターが嫌いなのだ。
欲望のために人を破産させる悪党だから。
どんなに内藤にだけは哀れなまでに誠実でも。
だが、そんな連中であればある程、内藤に狂う。
「内藤くんにちかよるんじゃねぇ、この雌豚!!」
ドクターの罵声が聞こえる。
イアホンからだ。
内藤の追跡とボディガードとして、おそらく内藤の近くにいるはずだが、離れた場所から確認している俺にはもうドクターがどこにいるのかわからない。
本職のストーカーはやはり違う
内藤の貞操を危険にさらさないために、ドクターをつけさせている。
内藤の命は内藤に惹かれるストーカー達が自分の命を賭けてでも護ってくれるだろうが、内藤の貞操についてはかなりヤバイ。
だってストーカー達は本気で内藤が欲しいのだ。
その身体も心も。
そこはストーカーにはストーカーを向かわせる。
大体、欲望がデカければデカいほど、内藤に惹かれ、そして、欲しくてたまらないほど、内藤に実際には手を出せなくなる。
詰まり、芯まで汚れきったドクターでは内藤に指1本触れられないので、対ストーカー対策としては最適なのだ。
そして内藤が好きであればあるほど内藤には嫌われると言う・・・。
「あ、でも制服超可愛い、制服ウルトラ可愛い。後で制服くれないかなぁ・・・」
おそらく、ストーキング専用のシャッター音のしない携帯で、内藤の写真を撮りまくっているはずだ。
後でデータを消させる。
絶対。
内藤が高校時代の制服姿で現れた時、鼻血を出して倒れたのはドクターだった。
もちろん誰も助けない。
「やだ尊い・・・」
何故かナツもめずらしくキャアキャア言っていた。
こんなはしゃいだナツなんか知らない。
ナツは何か違う風に内藤を拝んでいた。
「実は美人の塩対応ツンデレ高校生受なんて最高すぎる!!!」
ナツ、お前は何を言ってるんだ。
ナツ的にはドクターとのカップリングは許せないのだそうで。
その意味もわからない。
「同級生がいい!!彼だけに心を開くのが尊いから!!」
何故俺を見る。
13歳のころだって、そんなにキラキラした目で見てくれなかったじゃないか。
何を言ってるんだ、ナツ、俺にはお前の言葉がわからない。
分からないのは男もだろうが、男はナツに向かってとりあえず唸って威嚇していた。
「こっちのカップリングもあたしは認めてないからね!!」
ナツも男を睨みかえしていた。
なんの話だ。
そして俺と内藤が同じ高校だと知った男が妙に興奮しはじめて、「お前の制服はないのか」と騒ぎ始めたりもしてたいへんだった。
「何で俺の制服がいるんだ」
分かっていたが聞いてみた。
「高校生のお前を抱きてぇ。制服着たまま何回もイカせてやりてぇ、何ならお前の高校の教室がいい。机の上でズボンだけ下ろして突きまくりてぇ」
男は真剣だった。
「・・・カップリングは認められないけど!!」
何故微妙によろこぶ、ナツ。
なんでだ。
「 誰がするか。 制服プレイなんか!!」
オレは怒鳴った。
とりあえず殴っておいた。
とにかく、大騒ぎだったんだ。
しかし、内藤。
童顔にも程がある。
高校生にしか見えなかった。
そして、驚くべき程に冷たい。
女の子への態度は零下に近い
女の子はフリーザーの中にいるようだろう。
本来内藤は、内気で素っ気ないが、とても優しい男なのだが、自分に下心のある人間には氷のように冷たい。
冷気のような声と態度で切りつけられながらも、女の子は内藤を仲間達の方へと誘導していく。
「本気でモノにしたければ、自分のテリトリーへ連れていくのが人間だ」
ドクターの読み通りだ。
「で、お前は高みの見物か?内藤くんを使っておいて」
ドクターが皮肉を言ってくる。
「そんなわけないだろ。内藤はあくまでも、きっかけつくりだ。悪魔に接触すんのは、俺だよ」
俺は言った。
そう。
悪魔と向かいあうのは。
俺じゃないといけない。
俺が始めたんだからな。
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