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悪魔 9
いや、意外と楽しい。
なんか頭どうしてんじゃないの、家で呪いの儀式とかしてるのかみたいな、呪われたみたいな格好している子ばかりだから最初はビビったけど。
病んでるメイクとファッションは正直わからない。
男の子のしっかりメイクもわからないし。
俺はこの街の子供達と遊んでた。
何故「だるまさんがころんだ」なのかは俺にもわからないのだが、誰もが知っててみんなで出来る遊びをみんなで考えてた結果これになった。
酒のんで騒ぐよりよっぽど良くない?
思っていた以上に楽しいし。
結構、この子達は俺の実家の周りをウロウロしている中学生達と変わらなかった
服装がちがうだけで。
俺たちは、ヤンキーと揶揄されがちなファッションの影響をその両親から受け継いでしまっているからね。
和柄ジーンズとか好きです、はい。
さすがに地元以外では着ませんが。
この子らも、本当の自分の街では違う服を着てるんだろう。
つまり、俺達とおなじような街の子だ。
大人の目が行き届かない。
放っておかれている子供達だ。
俺の場合は、親も周りの人も俺をみていてくれたけど。
幼なじみやツレはこの子達に近かった。
そう、一緒に飯を食ってた友達連中は。
でもここには俺の実家のような食堂はなくて。
行ける場所なんかなくて。
だから代わりに通りに座って酒を飲んでるのか。
ちなみに内藤は機嫌がわるいままだ。
女の子数人に取り囲まれているからだ。
女の子達は内藤に夢中なのだ。
互いに牽制しあっているため、今のところ内藤に実害はない。
内藤を取り囲む少女達が、肉を狙いあう猛禽類に見えてビビる。
まあ、これでも俺たち大人ですから、未成年には手を出さないよ。
内藤は高校生ってことになってるけど。
俺は内藤が女の子によってグループに紹介され、本人は全く馴染みはしてないが、争奪戦が繰り広げれるくらいになってきたタイミングで、通りかかって内藤に声をかけた。
内藤の姉貴のお友達、という設定である。
ちなみに内藤には氷のように美しいお姉ちゃんがいるのは本当。
実際はとても優しい人なのだが、あまりの冴えて切れた美貌のため、怖がられている。
俺が姉ちゃんのファンなのはあの男には内緒。
「なにしてんのこんなとこで」
みたいな感じで、内藤に話しかけ、そこから子供達にも話しかけて。
ええ何この人、みたいなところから、大衆食堂の息子のスキルでコミュニケーションしていき、一緒に遊ぶまでに至る。
まあ、色々話してみたら、実家の周囲の、今でも俺の両親が妹と一緒に飯を食べさせているガキ達と何もかわらない。
街の悪ガキ。
昔の俺と同じだ。
俺達のところでは咳止め薬はなかったけれど、ライターのガスを吸うとかもあったしね。
俺の母親に見つかったらその場で殴られて止めさせられて終わる。
そう、何もかわらない。
両親や常連さん達がいなければ、俺もこの子達の1人だったと分かってる。
「だめだよ、るいちゃん、ズルはだめ。おーい、瞬くん、アウト」
俺は厳しくジャッジする。
真剣に挑む「だるまさんがころんだ」は最高に面白くなるとの俺の主張はうけいれられつつある。
また男の子達とはガチの追いかけっこがどれほどハードな遊びかを検証しようということになっている。
地元に帰ったら、地元の連中と本気の鬼ごっこを夜の浜でしている。
これは死ぬほどしんどいが、最高に面白いのだ。
酒でやられたお前らとは身体の出来が違うことを教えてやらねば。
まあ、きゃあきゃあさわいで迷惑といえばめいわくかもしれないが、クスリやってるわけじゃなく、酒のんでゴミを散らかしているわけでもない。
だるまさんがころんだ、をしているのを笑ってみていく人もいるからいいんじゃない。
この子達の行く場所がないのは、この子達だけのせいでもないしな。
地元のガキ達とも今度これをしてみようか、とか思った。
俺はそれなりに、街のガキ達には顔がきくのだ。
舐められてんのか、親しまれてんのかわからないけど。
「面白い、面白い」
女の子達はテンションあげて大笑いしてる。
なにが面白いのか分からないが永遠に笑い続けるモードに入った。
「〇〇〇#*&♪♩!!!!」
もう何言ってんのかわかんねーよ、お前ら。
可愛いな。
小学生のウチの妹とかわんねーわ
無理やり参加させられてる、内藤だけは、周りの女の子達に手やら肩やら背中やら触られて不機嫌である。
さりげなく、内藤を女の子達から切り離す。
「 だめだよ?不用意に人の身体に触るのはセクハラだからね?」
教えておく。
自分達の身体に値段をつけて触りにくるような男達しか知らない彼女達は目を丸くするが、内藤の不機嫌な顔にすぐ謝る。
「ナイトウくんごめんね」
「ゴメン」
「ごめんなさい」
口々に謝る。
可愛いじゃないか。
正しい教育ができたことはいいことだ。
俺は満足した。
「何?何してるの?楽しそうだね」
優しい声がした。
その声に俺はソイツが何なのかがわかった。
ドクターと同じだ。
詐欺師の声。
心地良い、ずっと聞いていたくなるような声。
だからこそ、聞いてはいけない声。
悪魔の声だ。
俺は振り返った。
悪魔と向かい合うために。
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