40 / 118
悪魔 10
「面白そうなことやってるね」
ユウタは綺麗な顔をしていた。
あの少年を犯しながら殺した時と同じように。
柔和な笑顔だ。
俺にまとわりついていた女の子達が一気にユウタの方へ走っていく。
仲良く遊んでた猫達が違う人があらわれたらそっち向かっていくのを見たような切なさかあるが、大体において、俺にたいする女の子達の扱いはこういうものなのでいいや。
こんにちは。
面白くて楽しいお友達ナンバーワンとよく言われています。
いや、もう女の子と付き合うことないんでいいんですけどね。
だって、女の子達と遊んでるあいだもなにか殺気が飛んでくるんだぞ。
姿は見えないのに、確かに男がここにいて、殺意を放っているのがわかるんだ。
女の子達が「なんか寒くない?」ってブルってふるえてたんだぞ。
そして、多分ね、俺が女の子達の誰かにね、特別な視線を向けたりしたらね、俺の知らないところでその女の子がひっそり殺されてしまう可能性は十分にあるんだよね。
だから。
だから。
女の子達が俺に関心をもたないのは良いことだ。
そして、あの男がそんな心配をしなくてもいいようにするのが、あの男といることを決めた俺の役目でもある。
俺を愛しているのはそんな男で、俺はそんな男と暮らしているのだが、だか、俺は目の前にいるこの美しい悪魔の方が恐ろしく思えた。
「ユウタ!!」
「ユウタ!!」
甘えたように女の子達はその少年にまとわりつき、少年達も媚びた笑みを貼り付ける。
遊んでいた子供らしさは消えて、肉になる。
まとわりついて欲しがる肉の欲望だけが剥き出しになる。
欲しい欲しい。
粘つく欲望に絡み取られていく。
ドロドロとした欲望の固まりになる。
人間は何にでもなる。
俺は知ってる。
あの男が俺には可愛い男であるように。
そしてどこかでは恐ろしい男であるように。
俺の母親が厳しく優しい母親だけど、昔は修羅のような人間であったこと。
怪物は人間から生まれ、怪物は人間でもあるのだ。
無邪気な子供は。
肉欲まみれの奇怪な肉人形にもなる。
だがそうさせているのは。
この悪魔なのだ。
人間を変えるのは人間だ。
悪魔は人間なのだ。
「君は誰?」
悪魔はそう言った。
悪魔は美しい目で俺をみた。
そうだ。
美しくなければ悪魔ではない。
人を堕落させれなければ。
「君がこの通りを仕切ってるって子?」
俺は笑顔で言う
これは挨拶だ。
挨拶から始めよう。
「俺は違う街からきたんだ」
俺の臭いはわかるはず。
通りの子供の臭いがするだろう。
それは俺の血肉だ。
さあ。
俺もお前の獲物にしてみろよ。
俺は満面の笑みを悪魔にむけた。
ともだちにシェアしよう!