42 / 118

悪魔 12

「また来る?」 「来てね?」 「絶対!!」 かわいい。 女の子達は小学生の妹の友達とたいして変わらない。 帰ろうとする俺に取りすがる。 頭撫でてしまった。 嬉しそうにきゃあきゃあしてる。 マジ可愛い。 「 くん、今度はマジ鬼ごっこしよ!!」 男の子達も地元のガキ共となんら変わらない。 舐めてんのか、親しまれてんのかわからん口ぶりも。 「来る来る!!」 俺は手を振る。 ただの悪ガキ達だ。 仲間と居場所が欲しいだけの。 危ういものを持っていて、容易く破滅に向かうとしても、子供なのだ。 見捨てられた子供達がそれでも、身を寄せあい生きているのだ。 親がいて、経済的には問題なくても、見捨てられてるから街の通りで騒いでいる。 ここでしか着れないような服を着て。 身体を、お金に変えて、大人相手に稼いでいても子供は子供でしかなかった。 判断力も、感覚も。 全部分かったつもりの子供だ。 「また来てね?」 ユウタも笑顔で言った。 ユウタが近付くだけで、子供達の空気が変わる。 無邪気な15・6の子供達が、肉の臭いを放ち始める。 大人顔負けの欲望の臭気に胸が悪くなる。 なるほど。 内藤は常にこれを嗅がされてるから、すっかり自分に近付く人間は嫌いになるわけで、童貞を拗らせているわけだ。 わかる気はする。 「帰ろ」 内藤は帰りたがっている。 内藤に触れることは出来ないが(内藤がオーラで拒否してる)、それでも近くにいたい女の子達には間違いない欲望と、でもそれだけじゃない切なさが滲みでてる。 失恋確定だもんな。 内藤は自分に惹かれる人間を愛することはない。 内藤は好きになる人間は自分で選ぶのだ。 でも、1つ良かったことは。 彼女達はユウタの呪縛からは抜けた。 内藤に恋焦がれて、冷たく振られるだけになるんだが。 ユウタから離れる方がいい。 優しくされて食い尽くされるよりは、切ない失恋の痛みのがずっとずっとマシだろう。 「また来るよ」 俺はユウタに笑顔で言った。 俺は、ユウタと少し言葉を交わした。 そこで、俺は他の街か来たことを伝え、そこに意味を含ませた。 それはもっと楽しくなることを知ってるという話だった。 バーティを楽しくするためのモノだ。 咳止め薬よりも楽しいものだ。 ユウタは興味を示した。 子供達が現実を忘れてしまえばしまうほど、ユウタにはそれが都合がいいからだ。 「セッティング次第だけど、スゴいよ。しかも合法」 俺の街に入ってきたというソレについて俺はユウタに話した。 いずれ麻薬漬けになるとしても、本人達は人生の寄り道くらいのつもりでここにいるのだ。 子供達にはさすがに麻薬は敷居が高い。 酒と、薬として売られている咳止め薬を飲み干す位だ。 だが、それでは弱い。 ユウタにして見れば弱すぎるはずだ。 だが、最終的には売り物にする以上、あまりキツいモノも困る。 麻薬はあっという間に身体をガタガタにするからだ。 クリーンな身体で最終的には売れる、でも、もっと子供達が現実を忘れられるモノ。 そんなモノがあるなら、ユウタは欲しくてたまらないだろう。 だがそんなモノを信じられないだろう。 だから、俺は知り合いの名前をあげておく。 俺の街ではない、もっとデカい街のちょっとしたヤツの名前だ。 死んでなければ、まだこの名前は通じるはずだ。 「あの人と知り合いなの?」 ユウタが驚いた顔をする。 まだ生きてたか。 嬉しくはある。 「まあね」 俺は顔が広い。 俺自身は、普通の大学生だが、とにかく顔だけは広い。 「ふうん」 ユウタが興味を持ったのだ。 よし、かかった。 ここから始められると確信してた。 「連絡するね」 ユウタは笑顔で手を振った。 俺は振り返りもしないでさっさと歩き出す内藤を追いかけながら、振り返り振り返り手を振って、その通りから離れたのだった。 計画は出来た。 細かいところはドクターに考えさせる。 街は何も変わらないだろう。 子供達はこれからも流れ着くだろう。 身体を売り、破滅していく子供達はこれからもいなくならないだろう。 悲しいことだけど。 だが。 ユウタ。 お前はダメだ。 お前みたいなのは。 いちゃいけない。 お前は子供達を引きずりこんでる。 破滅させている。 自分の楽しみのためだけに。 俺は決めたのだ。 お前はナツに引き渡す。 ナツがお前をどうするなんか。 俺の知ったことじゃない。 それに、お前を殺さないと決めたのは。 慈悲ではないんだ。

ともだちにシェアしよう!