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悪魔 12
「また来る?」
「来てね?」
「絶対!!」
かわいい。
女の子達は小学生の妹の友達とたいして変わらない。
帰ろうとする俺に取りすがる。
頭撫でてしまった。
嬉しそうにきゃあきゃあしてる。
マジ可愛い。
「 くん、今度はマジ鬼ごっこしよ!!」
男の子達も地元のガキ共となんら変わらない。
舐めてんのか、親しまれてんのかわからん口ぶりも。
「来る来る!!」
俺は手を振る。
ただの悪ガキ達だ。
仲間と居場所が欲しいだけの。
危ういものを持っていて、容易く破滅に向かうとしても、子供なのだ。
見捨てられた子供達がそれでも、身を寄せあい生きているのだ。
親がいて、経済的には問題なくても、見捨てられてるから街の通りで騒いでいる。
ここでしか着れないような服を着て。
身体を、お金に変えて、大人相手に稼いでいても子供は子供でしかなかった。
判断力も、感覚も。
全部分かったつもりの子供だ。
「また来てね?」
ユウタも笑顔で言った。
ユウタが近付くだけで、子供達の空気が変わる。
無邪気な15・6の子供達が、肉の臭いを放ち始める。
大人顔負けの欲望の臭気に胸が悪くなる。
なるほど。
内藤は常にこれを嗅がされてるから、すっかり自分に近付く人間は嫌いになるわけで、童貞を拗らせているわけだ。
わかる気はする。
「帰ろ」
内藤は帰りたがっている。
内藤に触れることは出来ないが(内藤がオーラで拒否してる)、それでも近くにいたい女の子達には間違いない欲望と、でもそれだけじゃない切なさが滲みでてる。
失恋確定だもんな。
内藤は自分に惹かれる人間を愛することはない。
内藤は好きになる人間は自分で選ぶのだ。
でも、1つ良かったことは。
彼女達はユウタの呪縛からは抜けた。
内藤に恋焦がれて、冷たく振られるだけになるんだが。
ユウタから離れる方がいい。
優しくされて食い尽くされるよりは、切ない失恋の痛みのがずっとずっとマシだろう。
「また来るよ」
俺はユウタに笑顔で言った。
俺は、ユウタと少し言葉を交わした。
そこで、俺は他の街か来たことを伝え、そこに意味を含ませた。
それはもっと楽しくなることを知ってるという話だった。
バーティを楽しくするためのモノだ。
咳止め薬よりも楽しいものだ。
ユウタは興味を示した。
子供達が現実を忘れてしまえばしまうほど、ユウタにはそれが都合がいいからだ。
「セッティング次第だけど、スゴいよ。しかも合法」
俺の街に入ってきたというソレについて俺はユウタに話した。
いずれ麻薬漬けになるとしても、本人達は人生の寄り道くらいのつもりでここにいるのだ。
子供達にはさすがに麻薬は敷居が高い。
酒と、薬として売られている咳止め薬を飲み干す位だ。
だが、それでは弱い。
ユウタにして見れば弱すぎるはずだ。
だが、最終的には売り物にする以上、あまりキツいモノも困る。
麻薬はあっという間に身体をガタガタにするからだ。
クリーンな身体で最終的には売れる、でも、もっと子供達が現実を忘れられるモノ。
そんなモノがあるなら、ユウタは欲しくてたまらないだろう。
だがそんなモノを信じられないだろう。
だから、俺は知り合いの名前をあげておく。
俺の街ではない、もっとデカい街のちょっとしたヤツの名前だ。
死んでなければ、まだこの名前は通じるはずだ。
「あの人と知り合いなの?」
ユウタが驚いた顔をする。
まだ生きてたか。
嬉しくはある。
「まあね」
俺は顔が広い。
俺自身は、普通の大学生だが、とにかく顔だけは広い。
「ふうん」
ユウタが興味を持ったのだ。
よし、かかった。
ここから始められると確信してた。
「連絡するね」
ユウタは笑顔で手を振った。
俺は振り返りもしないでさっさと歩き出す内藤を追いかけながら、振り返り振り返り手を振って、その通りから離れたのだった。
計画は出来た。
細かいところはドクターに考えさせる。
街は何も変わらないだろう。
子供達はこれからも流れ着くだろう。
身体を売り、破滅していく子供達はこれからもいなくならないだろう。
悲しいことだけど。
だが。
ユウタ。
お前はダメだ。
お前みたいなのは。
いちゃいけない。
お前は子供達を引きずりこんでる。
破滅させている。
自分の楽しみのためだけに。
俺は決めたのだ。
お前はナツに引き渡す。
ナツがお前をどうするなんか。
俺の知ったことじゃない。
それに、お前を殺さないと決めたのは。
慈悲ではないんだ。
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