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悪魔 13

俺はちゃんと尾行を撒いた。 ユウタは俺と内藤をつけさせていたから。 子供達じゃない。 俺達位の若い男だ。 ヤクザでも通りの少年達でもない。 半グレ連中か。 ヤクザではない、不良少年上がりの集団がそれこそ暴力団顔負けに街を仕切りだしているのはどこも同じで。 だが、敵対しているかと言われたならそうではなく。 奇妙な共存関係にある。 ヤクザがやれないことを肩代わりし、半グレ連中にお墨付きをヤクザが与えたりもする。 人身売買はかなり危ない仕事だろう。 人間を動かすってのは殺すより証拠が残る。 ヤクザが直接、自分の手を汚してすることではない。 儲けをなんらかの形で掠めとってはいるだろうけど。 ヤクザはこういう仕事はしない。 ユウタと仕事してるのは。 半グレ共か。 俺は内藤をつれて電車を通り抜けて向こうのホームに渡ったり、コンビニの店員さんに助けを求めて浦口からだしてもらったりして、なんとか尾行をまいた。 そして一応、ドクターのお迎えの車に乗り込んだ。 後部座席に座っていた男に俺が引きずり込まれたので、内藤は嫌そうに助手席に乗り込む。 「内藤くん、お疲れ様!!」 ドクターの声が裏返っているが、返ってくるのは冷たい視線だけである。 本当に内藤は冷たい。 俺は男が俺の臭いを嗅ぐのを許してる。 髪に首筋に、唸りながら男は臭いを嗅いで、自分じゃない人間の匂いに怒って、自分の臭いを擦りつけている。 好きにさせてやる。 それで安心するならいい。 「ドクター、俺とユウタの会話聞いてたんだろ?どう思う?」 俺の問いに内藤話しかけても完全に無視されて凹んでたドクターが仕事の顔になる。 「カウントCDのことか。良く知ってたな。だがあれは都市伝説だ。そんなもの誰も見たことはない」 ドクターは言った。 さすがに知ってるか。 そう、長く囁かれてきた都市伝説。 だからこそいい。 「使えるよ。いい餌になる」 ドクターのお墨付きだ。 俺は長くかけていなかった番号にかける。 思ったより早く出た。 「よお、久しぶりだな」 声が言う。 その声に俺を背中から抱き締めて首筋や髪に鼻を擦り付けていた男がうなる。 「あれ?新しい犬を飼ったのか?」 声が戸惑ったように言う。 男の声が聞こえたのだろう 「まあ、そんなもんだ」 俺は男を宥めるために髪を撫でながらいう。 男はうなり、俺の喉を甘噛みする。 男はギリギリと携帯を睨みつける。 なんでだか、電話の向こうに自分と同じ臭いを嗅ぎつけたのだろう。 「死んでなかったんだな、うれしいよ」 俺は心の底から本音を言った。 「どうした。お前はもうオレに会いたくないんだろう?」 その声が切ない。 それは仕方ない。 お前が行ってしまったんだ。 俺達仲間を置いて。 そちら側に。 俺達は止めた。 古い仲間。 懐かしい友達。 「助けて欲しい」 俺は頼んだ。 昔の友情を使って。 「何と引き換えだ?」 声は言う。 死人の声だ。 どうせもうすぐ死ぬ。 俺達は止めた。 だけどコイツは行ってしまった。 来年まで生きてるかどうかわからない。 もう死んでるのと変わらない。 だが、友達の声だ。 「葬式には行ってやる」 俺は言った。 声は沈黙した。 「友達でいてくれるのか」 泣くような声だった。 引き止めた俺達を捨てて、そっち側に行ってしまったくせに、俺達を、俺を恋しがってやがる。 ムカついて、切なかった。 「・・・お前か死んだ時くらいは友達でいてやる」 俺は言った。 少し感謝していた。 コイツに頼み事ことが出来たことに。 コイツが本当にどこかのバカげた抗争で、死体になったことを知らされる前に話せたことに。 「・・・・・・聞いてやる」 俺の幼なじみの1人、今は大きな街で半グレになって、悪行に手を染めた元友達は、俺の頼みを引き受けた。 来年にはコイツは死ぬだろう。 殺しあった末に。 もっと早く死ぬと思ってた。 俺はいくつかのことを頼んだ。 これでいい。 俺はユウタにコイツの名前を出した。 俺の知り合いだと言った。 ユウタはそれを確かめるはずだ。 この違う街の悪党に。 俺について聞くだろう。 そして、コイツはユウタにちゃんと答えてくれるだろう。 これで、ユウタは少なくとも悪党と繋がっていると俺について思うだろう。 実際にその悪党と友達なんだがな。 「さて、カウントCDをつかってユウタを嵌める方法をドクター考えてくれ」 あとは俺はドクターに投げる。 「カウントCDって?」 内藤が聞いてくる。 さすがに内藤。 もう、俺の首とか甘噛みしている男をみても、顔色1つ変えない。 男は置いて行かれた犬が戻ってきた飼い主に離れないみたいになっているのだ。 内藤が男を犬か何かだと思ってる可能性はある。 「カウントCD。都市伝説。この世界で最もクリーンな麻薬だ」 俺ではなく、ドクターが説明し始めた。

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