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悪魔 17
金属性のドアがぶち壊されそうになっていた。
もう、ドアは半分ほどまがっていて、怪物の姿が露になっていた。
「ユキィィイ!!!!」
濁った目がナツを見つけて叫ぶ。
ナツはガタガタ震えて、へたり込んだままだ。
俺だって。
へたりこんでた。
だって13歳だぞ。
犬だけは俺と怪物のあいだに立って吠えていた。
怯むことなく。
ありえない。
ドアってのは内側を外の世界から守ってくれるものじゃなかったのか?
殺されるのか。
この怪物に殺されるのか。
さすがの俺も怯えた。
だが、犬が俺を振り返ってみつめた。
「相棒、諦めるんじゃねぇ!!」
一言唸るだけでそう言ってるのがわかった。
コイツは最後まで俺を守ってくれる。
なら、俺も最後まで諦めちゃいけない。
俺は周りをみまわした。
窓が開いていた。
ここは3階だ。
だが、ここしかなかった。
俺はTシャツをぬいで犬を担いだ。
犬はおとなしくしたがう。
Tシャツを裂いてそれで犬と自分を括った。
少し危なかしいが仕方ない。
何故だか落ちてた大人のベルトも使った。
「逃げるぞ!!」
犬をおぶって、俺はナツに言った。
もうドアは後、一蹴りで破られる。
俺は犬をおぶったまま、窓へ向かった。
ナツは驚いた目をしたまま、でも、それでも俺についてきてくれた。
「まてぇ!!!」
怪物が叫びながらドアを蹴破った時、俺とナツは窓から外に出て、窓枠をよじ登り、屋上へと上がろうとしていた。
足場になる場所は、大人ではあまりにもせますぎた。
特に脂肪で膨れ上がった怪物では無理だ。
いくらその脂肪の下に強靭な筋肉を隠していても。
「逃げるなぁぁぁぁぉ!!!ユキぃぃぃぃイイ!!」
窓から身を乗り出して怪物は叫んだ、が、俺たちは屋上に向う。
と言うよりそこしか逃げる場所はなかった。
フェンスさえない屋上に上がる。
怪物が上がってくるのはわかってる。
階段は1つしかないのだ。
俺は屋上に上がると犬を下ろし、まず何かないか探した。
一番いいのは、この屋上から外に出れるためのもの。
だがそんなモノは・・・。
後は子供である俺たちが怪物と戦えるためのもの。
俺には犬がいる。
最後まで一緒に戦ってくれる犬がいる。
だから、諦めない。
諦めないんだ。
ナツは震えていて、泣いていて。
それでも、ナツも俺と一緒に色んなモノが積み上げられている屋上で探し始めた。
2階の潰れた美容院が何かのテナントに代わるらしく、その工事のための道具が置かれていた。
「・・・父ちゃん」
ナツの声は刺さるように切なかった。
そして、屋上にあがってくる怪物の足音がした。
やれるだけのことを。
するしかない。
俺は。
俺も犬もナツも。
生き残るんだ!!!!
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