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トラップ 4

「セッティングが大事なんだ」 俺はユウタに説明する。 部屋の灯りを消して、カーテンを閉める。 アロマを焚く。 「白檀とかイランイランだな、催淫効果があると言われている」 俺はユウタに説明する。 重く甘い匂いが立ち篭める。 そこにユウタが選んだ少年かベッドに横になる。 ユウタは自分で試すわけではなかった。 するわけがない。 ユウタは咳止めクスリにも酒にも、ほとんど手を出していない。 飲ませて飲まない。 当たり前だ。 頭をクリアにしておく必要があるからだ。 それに、ユウタはセックスも酒も咳止め薬でも、快楽を得られないのだ。 ユウタが快楽を得れるのは。 獲物を地獄へ落とした時だけなのだ。 そして、今ではとうとう、獲物を殺し出した。 カナやセイヤのように。 止まらなくなってるのだろう、とドクターは見ている。 酒や咳止め薬やセックス以上にユウタは人を苦しめることに依存している。 その中毒は末期になっている もっと苦しめることがしたいから、そのための道具としてカウントCDが欲しい だけど、ユウタ本人が試すことはないだろうと、ドクターは予想していた。 ユウタは、他人の苦痛以外の何かの中毒になんかなりたくないからだ。 クリアな頭で人の苦しみをダイレクトに感じたい変態なのだ。 それに、他人が差し出すモノをユウタが試すわけがない。 疑り深いユウタは自分が選んだ少年を被験者にして、カウントダウンCDを試すことにしたのだ。 俺達と面識のない少年をえらんで、指名したのもその疑い深さからだろう。 俺に取り込まれて、ユウタに嘘をつかないように。 俺達が初めて会ったその子は、ユウタに言われるがまま服を全部脱いで、ベッドに横たわる ユウタが優しくキスをして、不安を取り除いてやっている。 まだ、15歳にもならないだろう。 でも。 ユウタに言われるがままに身体を売ってる1人だろう。 「大丈夫、気持ちいいだけだから」 俺に不安を取り除いてやって、と言われて、ユウタは少年に囁いた。 キスだけで半勃ちにさせてる。 少年はウットリとユウタを見つめてうなづいた。 俺はユウタにヘッドホンを渡す。 ユウタが少年にヘッドホンをつけてやった。 そして、俺はヘッドホンが繋がっている、ボーダブルCDの再生ボタンをおした。 そして、俺、ユウタ、そして、取り巻きの何人かは部屋の隅でそれが始まるのを待った。 少年は素っ裸にヘッドホンのまま、音楽をベッドの上で聴いているはずだ。 「何も起こらない」 ユウタがイラついた声を出すから、俺は指を立てて静かにするように言う。 俺だってドキドキしてる。 取り巻きには半グレ達が混ざっていて、これが上手く行かなかったなら、ユウタはその連中に俺を襲わせるだろうからだ。 ユウタは騙されるのが好きじゃない。 騙す人間だからこそ。 だから、絶対に許さないだろう。 でも、俺に何かがあれば、狂った魔王みたいなんがどこからか出てきて、大暴れするだろうけど、それしちゃったら、作戦は終わってしまう。 あの男はどこかにはいる。 しかし、あの男は姿を見せないと決めたなら、本当に消えてしまうのだ。 いつも不思議すぎる。 とにかく、ユウタにはなんとしてでも信じて貰わないといけないのだ。 カウントCDを信じて貰わないと。 俺の祈りが通じたのか、それが始まった。 ベッドの上で少年が激しく痙攣始めたのだ。 「イヒィ、ふううっ!!」 少年は目をかっと見開き、叫んだ。 それだけだったなら、何か毒か何かを飲まされと思うような顔や声だっただろう。 異様なのは、少年の性器がガチガチに、反り返り、白濁を吐き出していたということだ。 つま先で腰を浮かし、背中を反らせるようにして、ガクガクと腰を揺らして少年は思い切り精液を飛ばしていた。 「ぎぼぢいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 少年は喚いた。 自分で乳首を摘んで回しはじめる。 性器は勃起したまま、ビクビクと震えている。 少年の太ももや尻が痙攣している。 挿れられていないのに、中でイっているのがわかった。 いやらしく腰を自分で動かす。 中を犯しているペニスを楽しむかのように。 「奥ぅ!!奥をグポグポしてぇ、奥まで犯してえ!!」 少年は欲しがり、そうされているかのように、痙攣した。 腹筋がふるえている。 腹の中を犯されているかのように。 少年の姿は淫らでエロいものだったが、ユウタも取り巻き達はキョロキョロと辺りを見回していた。 だって、これはまるで。 見えない誰かに少年が犯されているようだったからだ。 少年の脚がまるで誰かに担がれているかのように曲げられ、少年は必死で尻を振る。 思わず誰かが確認しに行ったくらいだ。 その穴が広げられ、何かがぶち込まれているのではないかと。 でもまるで犯されているかのように身体をまげながら、尻をふりながらも、少年のそこはとじていた。 ひくつきはしていても。 でも、中を擦られて貫かれているのがわかる。 奥をこじ開けられ、そこをほじられているのがわかる。 それがわかってしまうのは、俺もそうされたことがあるからなんだけどね。 半笑いになる。 「しゅごい・・・しゅごい・・・これ、好きぃぃぃぃぃぃぃ」 少年は見えない誰かの首にすがりついていた。 ビクン ビクン つま先で、腰をふりながら、大きく痙攣して。 少年はベッドの上になげだされたように手足弛緩させた。 ヒクンヒクンと小さく痙攣しているが、目は虚ろに開かれたままで、口からヨダレをながしていた。 イキすぎて、気を失ったのだ。 ユウタも、ユウタの取り巻き達も呆気に取られていた。 音楽を聴くだけで気を失う程にイけるなんて。 そんなことが。 あるのか。 「人間とセックスするよりも、イける。凄いよ?」 俺は少年の頭からヘッドホンを外しながらユウタに言った。 ユウタは目を丸くして見ていたが、これで信じたはずだ。 カウントCD。 音楽の麻薬。 この世界で1番、クリーンな麻薬。 「それ、僕も欲しいな」 ユウタが言った。 ほら、信じた。 「ここから先はビジネスだよね」 俺は営業用の笑顔を浮かべた。

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