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肉体装置 7
モノトーンのドクロとナイフのタトゥーが掘られた背中がそりかえり、ピンと尖った乳首のある胸が張る。
カエルのように広げた脚は筋肉に覆われ太い。
自ら脱ぎ捨てたズボンと下着が落ちている側で、巨大な陰茎が勃起し、ゆれていた。
凶悪そうな面相の、イカついまだ若い男だ。
街で出逢えば、道を譲りたくなるような凶暴さがにじみでてくる。
でも、爪先立ちになって腰を揺らす様子は間違いなく、穴にぶち込まれ犯されている姿だった。
ヘッドホンをはめたそのイカつい男は、ベッドの上で見えない誰かに犯され、感じ喘いでいるのがわかる、
「ひぎぃ・・・!!そこっぅ!!!」
涎を垂らし、女のように尻を振る。
喘ぎ、叫ながら犯されていた。
それは誰が見てもわかる。
カウントCDを聞かせて数分でこうなった。
でも確かにその穴はひくついてはいても広げられもしてないし、何も入ってはいない。
尻を激しく突かれているような動きをその腰はしているけれど、だれもその男にのしかかっていない。
だけど、そのイカつい金髪の男はヘッドホンをつけたまま、ベッドの上でイキ狂っていた。
ユウタは流石に感心した。
また試してみたのだ。
そのCDを。
・・・そんなに簡単に信じるものか。
こんどは自分を守るためにいる連中の中から1人を選び、カウントCDを聞かせたのだ。
話を持ち込んできた、ユウタの人形達に妙な影響を与えているあのバカはまだ信用できる余地がある。
アレは単純バカだ。
嘘が付けないのはわかっている。
だが、あの青年を使っているこの胡散臭い男は、信用できない。
「嘘」をつける可能性もある。
また実験する必要があった。
だから、ユウタを護る連中の1人を選んで、CDを聞かせてみたのだ。
すると、まあ、このとおり。
この男はゲイが嫌いで、ユウタや身体を売る男の子達にもその態度を隠そうとはしなかった。
だからこそ、あえて、このCDの実験をさせてみたのだが。
ゲイ嫌いの男が、明らかに男に犯されて、イキ散らかしている場面をベッドの上で再現していた。
「もっとぉ・・・犯してくれえ!!!!」
泣き叫んで喜んでいた。
存在しない性器で激しく突かれ射精さえしていた。
ブリッヂでもするかのようにしなう背中。
尻がいやらしく揺れていた。
「犯して下さい・・・メスにしてください・・・ぐちゃぐちゃにしてぇ!!!」
男は泣いてせがんでいた。
ユウタや男に見られていることを忘れたかのように、存在しない性器でイカされ、泣いてもっと犯されることを願う。
ユウタはよろこんでスマホで動画をとった。
あとで、このゲイ嫌いな男に対する嫌がらせにするつもりで。
上の意向があるから、ユウタに口にしないだけの頭はあるが軽蔑を隠そうとはしないこの護衛がユウタは嫌いだった。
「凄いね。誰でもこうなるの?中で犯されるみたいに」
ユウタは男に聞く。
皮肉なゆがんだ笑みを隠そうとしない男は、さらにいやらしい笑顔を浮かべた。
「だって、中で感じる方が単に射精するより気持ちいいでしょ?より気持ち良くなろうとしてるだけ」
男は金髪男の尖りきった乳首を指先で弾いた。
「ひぎぃ!!くふぅっ!!!」
白眼を剥いてまた金髪男がイク。
あんなにゲイを嫌って、小馬鹿な態度をしてきた男は、必死で腰を振って貫かれるのを喜んでいる。
「もっと・・・してください・・・おねがいします・・・」
見えない誰かに懇願していた。
ユウタは笑った。
ユウタは自分をゲイだとは思っていない。
何だっていいのだ。
だが、この所詮下っ端な男に視線だけで蔑まれるのは気に入らなかった。
いずれ、どこかの誰かにひどい目にあわせるつもりだった。
見えない誰かに犯させイキ狂わせるこのカウントCDは面白い罰になった。
「もう、コイツは男とセックスしたくてたまらなくなる。そこにつけ込んでやれば、もっとコイツで楽しめるよ」
男がユウタの背後に立ち、その首筋に息を吹きかけながら言った。
男はユウタに関心があることを初めから隠そうとはしていない。
歪んだ微笑も、目の奥は笑っていないその目も、奇妙な魅力がある男ではあった。
「知ってるんだろ?中で感じる方が、突っ込んで出すより気持ちいい」
男は耳もとに息を吹き込み囁いてくる
「もっとぉ突いてぇ!!犯してぇ!!!!」
ベッドの上で男が中を犯されることをせがんでいる。
音楽が見せる妄想の中で。
あれほどゲイを軽蔑していた男が。
「そんなに中が好きなら、オレがあんたを犯してもいいんだよ」
ユウタは自分を背後から抱きしめるように被さってくる男を鼻で笑う。
でも。
確かに。
長いこと、中では楽しんでいない。
ユウタは支配することが好きなので、する方が好きだ。
その気のない少年を抱かれるのが好きにさせるのが面白いのだ。
これこそ支配という感じがして。
でも。
狂ったように感じてる男をみていると。
あれほまでに男同士のセックスを嫌悪していた男が泣き叫んで欲しがっているのをみると。
たまには後ろでしたくなった。
「もっと、ちんぽください・・・犯してください・・・」
男は叫んで腰をふっているのだ。
「中、気持ちいいね、知ってるね」
囁かれ、尻を撫でられてもユウタがそれを許したのは、久しぶりに、そこで楽しんでみたい気持ちになったからだ。
だから、ズボンを下ろされるのも、シャツをまくりあげられるのも許した。
挿入するだけが相手を支配する手段じゃない。
カウントCDが有効だとわかったのなら、この男を支配した方がいいし・・・久しぶりに穴を使ってみたくなったのだ。
男の指先がユウタの乳首を撫で、性器を擦り上げていく。
男は。
とても。
上手かった。
「CDをどう使うの?」
男の指を楽しみながらユウタは聞く。
神経を掴み出すように感じさせるその指の触れ方は、今までされたらことが無いもので、ユウタはそれを楽しみ出した。
そっと乳首の周りを撫でられ、浮き上がった神経を指でなぞられる、そんな感覚。
むき出しの快感。
ねっとりとしごき始めるその動きもまた、いやらしく快感を掴みだされるよう。
ユウタはその手を楽しんだ。
「例えばこの男は男に犯されたくてたまらなくなってる。カウントCDだけじゃそのうちものたりなくなる。だから、それを与えてやる代わりに、色んなことをさせるんだ。例えば、そう、誰かを騙してつれてこさせたりね、連れてきた相手にまたカウントCDを聞かせて、快楽を教えこみ、もっと欲しがるようになったなら、また誰かを連れてこさせる。どんどん奴隷が増えていくよ」
男が尻に硬くなったものを押し付け擦り付けながらささやいてくる。
それは面白かった。
今のユウタの人形達は喜んでユウタに従う。
それを裏切る楽しさはこの上ないものだったけど、同時に、ユウタがうらぎってもそれでも、人形達がユウタを慕うあの感じは不快でもあった。
ユウタのためになら、喜んで死ぬようなのでは与えるくるしみが足りないのだ。
嫌がりながらも、苦しみながらも、でも欲しくてたまらないから他人さえ売る、そこまで落ちぶれて行く獲物を見たかった。
「君は素敵だ。その君に惹かれた人間がどんどん連鎖して、人を不幸にしていくんだ。不幸になると分かっていながらね。内臓や売春に売り飛ばすだけじゃない、もっと色んな事ができる。なんならテロだってできる」
男の言葉はその愛撫より良かった。
ユウタは首を回して、背後に立つ男とキスをした。
キスも良かった。
いやらしくて、ただ、ただ欲望をかきたてるだけのキス。
ベッドの上で、金髪は見えない相手と体位をかえてやっていた。
犬のように這い蹲って、必死で懇願していた。
「オレはメスです、犯してぇください、犯してください・・・」
望むように犯されて泣き叫んでる。
もう二度と、ゲイを蔑むことなんかできないのは分かった。
この男こそ、男に犯されたい男なのだ。
そうしてもらえるためになら、何でもするのもわかった。
その面白さに、ユウタは感じた。
男の手の中に出す。
気持ち良かった。
「穴で感じてみるだろ?」
男の掠れた声は嫌いじゃない。
久しぶりに穴が欲しがっていた。
後ろでするのも悪くない。
「ひぎぃ・・・もっとしてください・・・」
馬鹿みたいに妄想のセックスに溺れる金髪男の横で、この男とするというセッティングも悪趣味すぎて良かった。
「他人を売り飛ばす下衆に人間を変えよう、沢山沢山、不幸にしよう」
男の言葉は今まで聞いたことのある口説き言葉の中で1番あまかった。
「後ろは久しぶりだから・・・優しく、ね?それからゴムはしてね」
ユウタは男に言った。
もう男の指はユウタの中に入っていて、その動きをユウタは気に入っていた。
何より。
人間をクズに変えて人間を陥れさせるっていうのは。
たまらなく感じてしまう要素だった。
「あっ・・・いいっ」
ユウタは男の指を嬉しみはじめる。
そして男も心からユウタの身体を楽しんでいた。
互いに人間を陥れるのが大好きな人間同士の、だからこその嬉しみ方がそのセックスにはあった。
ヘッドホンをつけて、ベットでイキ続け、気を失ってはまた感じ続ける金髪男の横で。
ユウタとそのいかがわしい男は、ねっとりと身体を絡ませ、心ゆくまでセックスを楽しんでいたのだった。
それは契約の成立でもあった。
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