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肉体装置 12

余すところなく喰われた。 男は俺で飢えを満たした。 俺の最奥をぶち破って喰らい、注ぎ込んで吠えて、乳首や性器を喰らい、肉という肉を味わわれた。 男の形を覚えた、男のモノしか知らない俺のソコは、男を迎え入れ、締めつけ、欲しがり、男を満たした。 「お前のだ。おまえだけの物だ。これもオレも」 男は重く突き上げながら、叫んだ。 「俺の・・・俺のぉ!!!ぎぽちいい!!好きぃ・・ぐぅがっ!!」 俺はわめき散らして、喜んだ。 痙攣したし、腰は止まらないし、精液ではない液体をぶちまけていたし、男のそれを締めつけ絞りとってたし。 もう無理って思うのに、欲しがられたなら、喜んでしまう。 「可愛い・・・可愛いいなぁ・・」 俺は心から言った こんなに欲しがって。 俺に必死で 余裕が無くなる男が可愛くて。 「殺しちまうから・・・ちょっとだまってくれ」 男が歯を食いしばりながら、言う。 それでも、俺を殺さないように耐えているのも、また可愛いかった この思考はヤバい。 殺されそうなのに可愛いのはヤバい。 確実にヤバい。 男がホントに俺にしたいようにしたら、俺はヤリ殺されるのだ。 殺してもまだ、男は俺を犯し続けるだろう。 骨になるまで。 でも、しないのだ。 可愛い可愛い俺の男は俺を愛してるから。 俺の脚を担ぎあげて、俺を貪る男の頬に手を伸ばした。 「可愛い・・・俺は・・お前が・・可愛くて仕方ないよ」 男がくらい尽くしたくなる衝動を耐えるため、止まったから、そう言えた。 男の顔が歪み、痛みを堪えるような顔になる。 「胸が痛てぇ・・・」 身体を建物に挟まれている時にだって痛みを訴えることがなかった男が苦しそうに言った。 「痛くてたまらねぇ・・・耐えられねぇ。なのに、悪くねぇ」 男の目の中の炎が燃え立つ。 火のような色の瞳。 その火は自分自身も燃やしてきたのだろうか。 強く見つめてくるのに、戸惑ったようでもある瞳。 この男を建物の下敷きから助け出して、担いで歩き出した時にもこんな目をしてた。 「オレの息の根を止めれんのは、お前だけだ。お前のためなら死んでやる。お前以外の理由では死ぬ気がねぇ」 俺の手に頬を擦り付けながら言う男が切なかった。 「いいか、俺より先に死ぬな」 俺は言った。 これは本音だった。 愛するものに先立たれた辛さを俺は知っている。 犬は俺を置いて行った。 確実に心は引きちぎられた。 犬への愛がなくなるわけではないし、犬の存在が消えるわけではない。 犬と俺は人生を共にするパートナーだった。 親兄弟とは違う、それ。 親兄弟にはそれぞれの人生がある。 でも犬とは共に人生を歩むものだった。 それに置いていかれる辛さはもう嫌だ。 「お前は俺を置いて死ぬな」 これは俺の切ない願いだった。 男は唸った。 「死んでたまるか・・・オレの後に誰かがお前の隣りにいるなんて嫌だ!!!」 男は分かりやすい嫉妬を叫ぶ。 嫉妬しても、直接的には口にはださない男にしては、まあ、良い感じだ。 嫉妬して、こっそり排除しかねないからなコイツは。 「可愛いな、お前。・・・愛してるぞ」 俺は笑った。 こんなことまで可愛いと思うような自分がもう末期だな、と思って。 男は吠えた。 撃たれた獣みたいに吠えた そして、そこからはもう、何も言わせて貰えなくて、 「愛してる」 と叫ぶ男に、気を失うまでやられ叫び、気を失っても激しくつきあげられて、目覚めてまた叫び、久々、ドクターが呼ばれる事態になるまで責められたのだった。 愛を囁くのは。 程々にしておこう。 男には俺より長く生きて欲しいが、俺が男に殺されるのは本意じゃない。

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