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肉体装置 13

ドクターは不機嫌だった。 どうやらドクターも御楽しみだったらしい。 誰と? 聞くのは馬鹿らしい。 ドクターはユウタとやりたがっていたからだ。 ユウタとはしてただろう。 ちなみにドクターはあのカウントCDの実験台になった金髪の男に予め暗示をかけていた。 ユウタがあの金髪男のゲイへの憎しみにうんざりしているのは調査済だったので、実験台にするだろうと予想していたのだ。 「ゲイをそこまで憎むのは、逆に興味があるからさ」 ドクターは笑った。 どうやったのかはわからない。 でも、ドクターはあの金髪をたらしこんで、多分男がベッドで再現したように、泣かせまくったのだろう。 内藤には「暗示だけ、セックスなんかするわけがないよ」と言っているが、ドクターこそホンモノの嘘つきなのだ。 ドクターに再会してもあの実験台の金髪は分からなかっただろう。 ドクターは別人だったから。 でも、金髪の身体はドクターの暗示を覚えていて、ドクターの指示にその忘れられない夜をリピートさせてみせたのだ。 俺はドクターを理解している。 どうせ、ユウタとした後に、その金髪男をもう一度抱いていたんじゃないかな、と。 暗示を解くのと記憶を消すのと両方しながら。 「もう1回くらいしたかったのに・・・ゲイが嫌いなノンケを落すのって最高なのに。もう、男に突っ込まれないとイケない身体にしてあるのに・・・あのそんな自分が嫌なのに感じてるのがたまんないのに」 ブツブツ言ってたのでそうだろう。 内藤が今はいないからドクターは何も隠さない。 流石に俺は事後の後始末の場面を親友には見せたくないからこんなところに呼ぶわけがないし。 大体内藤は。 潔癖なのだ。 呼んだのはドクターだけだ。 当たり前だ。 ナツにこんなとこ見せれるわけがない。 初恋の少女だ。 色々あるんだよ!! 俺は大人しく点滴されている。 今日は動けないな。 でも、脱水だったのはかなり楽になった。 男が反省して、枕元で正座している。 大きな身体をできるだけ小さくして。 「気にすんな」 俺は言ってやる。 男は差し伸べた俺の手を握って、小さく唸った。 犬が俺の見てないところでやらかした時に、クンクン鳴いていたのを思い出して、笑ってしまった。 まあ、やらかすことはあるよな。 俺もお前も。 それはそれで。 「で、ユウタとの取引は?」 俺はドクターに聞く。 「問題ないね。アレはイカレてる。ゲイ嫌いが犯されて屈辱に歪むのが楽しいって、それを見てイク変態だ。快楽のために人間が堕落していくのが見れるという考えだけで、何回もイってたよ。いい穴だった。生でしたかったな」 ドクターは下世話に笑った。 騙されてよろこんでいるユウタとセックスするのが楽しいドクターも同じようなものだと思うが、まあ、いい。 「アレが欲しいのは金じゃない。破滅と絶望だ。本当は嫌なのにそうしてしまう、そして破滅する、そういうのを見て楽しみたい。だから、それを提供してやったなら、飛びついたよ。しかし、たまんないね、あの身体。あと何回かはたのしみたいねぇ」 ドクターはご機嫌になった。 ゲスの話はどうでもいい この先の具体的な話だ。 俺もドクター任せて実はちゃんと聞いてない。 「テロを行う。というより、行わせる」 ドクターはしれっと言った。 「まあ、直前でそれを暴いて、子供たちにユウタの正体を見せつけるし、ユウタのバックの連中もユウタがテロリストだと知ったなら、奴らがユウタの始末をするさ。悪党は悪党でも、商売のための悪党だからな。テロリストだけは扱わないさ。誰が商売する場所を破壊したいと思う?」 ドクターの言葉は俺が予想していたものと違って。 流石に俺はおどろいた テロ? テロリストだと??? ドクター何考えている? ポカンとしている俺のスマホが鳴った。 俺は画面をみる。 シン、ホームレスを殴っていた少年からだ。 俺は慌てて電話に出た。 俺はもう迷わないと決めたからだ。 シンはいけないことをした。 でも、見捨てない。 「たすけて・・・助けてぇ・・・」 シンが電話の向こうで泣いている。 俺は起き上がって、点滴を抜いた。 「こら、寝てろ!!」 ドクターが怒る。 俺に何かあったら男に殺されるからだ。 無視した。 「シン、どうした!!」 俺はフラフラしながら起き上がる。 「殺される・・・」 シンが嗚咽していた。 俺にはシンを助けにいく選択肢しかなかった。

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