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肉体装置14

「肉体なんかただの機械、装置だよ」 ユウタがそう言ったのだっけ。 「金に替えて何が悪い?」 ユウタの言葉はシンにはストンと胸に落ちた。 何が悪い? モノやサービスを売るのと何がかわる? 自分の肉体を自分の好きなように売ってるだけだ。 自分の責任で。 そりゃ最初は、流石に男のモノを、咥えたりしゃふったり突っ込まれるのは抵抗があった。 でも、ユウタが凄く気持ち良くしてくれたし、ユウタ以外でもやりようにやっては気持ちよくなれる。 そういうのはこっちの技術だ。 バカなオッサン達は自分のテクやモノのおかげだと思っているが、ユウタのことを考えながらオナニーしてるだけだ。 どんな粗末なモノで酷いテクニックでも、脳内にユウタとのセックスを思い出せばイけるのだ。 これもユウタが教えてくれたことだった。 ユウタは。 見なくてすむようにしてくれた。 田舎の誰にも気に止められないようなガキ。 誰も価値を認めてくれない、実際何もできない子供。 親も諦めている。 勉強なんかとっくの昔についていけない。 ケンカも弱い。 嘘ばかりつくから誰にもまともに相手もしてもらえない。 嫌われ者で、勉強もできない、進学も無理。 スクールカースト底辺。 まともな未来なんかもうなかった。 でも。 でも。 誰かに相手をしてもらいたかった。 存在を無視され、空気のように扱われたくなかった。 とにかくデカい街に出てみたくて。 家出して。 あの通りにたどり着いて。 ユウタに拾われて セックスを教えられて、綺麗に姿を整えられて。 オッサン達に抱かれるのはアレだけど、でも、生活が楽しくなった。 もう、誰にも見えないモノにされてないし、バカにもされない。 咳止めクスリと酒があれば、いくらでも盛り上がって楽しくなれたし、田舎じゃ声もかけられなかったような女の子ともセックスもできる。 オッサン共と寝て、金を巻き上げて、着飾り、騒いで楽しんで。 ユウタもたまには相手してくれて。 シンは楽しかった 毎日楽しかった。 あんな田舎になどで帰りたくない。 親も、ダメなムスコなどいない方がいい、と諦めているような家になんて。 出来の悪い息子。 ダメな兄弟。 バカな生徒。 ダサい同級生。 そんなモノにもう戻りたくない。 ここにいれば、シアワセだった。 ユウタが全て与えてくれた。 ユウタが大好きだった。 でも、今。 シンは狙われていた。 「シンちゃんどこにいるのかなぁ?」 楽しそうな笑い声が聞こえる。 昨日、ホームレスの爺さんを捕まえる時に自分が出していた声と同じだ。 ゴミみたいな生き物で遊んでやろうと思っている声だ。 だから、昨日のホームレスの爺さんと同じでシンは必死で逃げている。 あの動画を。 ホームレスの爺さんを殴ってる動画を。 アイツらがネットにあげたから。 凄まじい勢いで拡散され、シンはSNSのアカウントや名前まで特定された。 大概は嘘くさく襲ってる正義ぶったやつらだ。 ただ、ネットでのあの動画はあまりにも沢山の人たちの目を引きすぎた。 正義感から警察に自分を突き出すためにとか、説教するために追ってる奴らはまだいい。 「コレ、コイツで遊ぼうぜ」 そうおもうヤバい連中達も、シンを追い始めたのだ。 ネットで誰かが常にシンの位置を教えていく。 「あそこで見かけた」 「通りにはいない、知り合いの店に隠れてる」 追ってる連中に、シンの情報はどんどん流れていくのだ。 シンは走って逃げていた。 あのお兄ちゃんと街で鬼ごっこしたのが、意外なところで役にたっていた。 シンはこっそりあの人を「お兄ちゃん」と心の中で呼んでいた、昔。たった1人だけ、シンに優しかった従兄弟のお兄ちゃんに似てたから。死んでしまったけど。 でも、もう。 路地においつめられて。 シンを追ってる連中の中で、1番タチの悪いのにみつかって。 連中がニヤニヤしながら近づいてくるのがわかる。 昨日、シンが爺さんを追い詰めた時にしていた顔と同じだろう。 シンが楽しんだように、こいつらもシンを殴って楽しむのだ。 シンは泣いた。 こわかった。 「お兄ちゃん・・・」 シンは自分を飾り立てたりしなくても、自分を変えなくてもやさしくしてくれた、たった1人の人を呼んだ。 だって、あの人は来てくれない。 昨日のことで、オレを嫌いになったから。 もう死んだ人にしか、シンは助けを求められなった。 あの人に電話したけど、来るはずがないのはわかってた。 渡すものがないのに優しくしてくれる人なんかいない。 ユウタは、シンを見捨てた。 価値がなくなったから。 「オレを巻き込まないでね」 優しく言われて、電話を切られたのだ。 「シンちゃん発見」 「シンちゃん俺たちと遊ぼう」 「シンちゃん、どれくらい丈夫?」 「あそぼーぜ」 笑ってる声。 昨日の自分達と同じで。 だから。 爺さんみたいに殴られる。 いや、か弱い自分のパンチなどとは、全く違うソレを受けることになるのだと、シンは理解した。 泣きながらへたりこむしかできなかった。

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