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立ち上がる 4

「また勝手に、また勝手に!!計画を変えるぅ!!ど素人のくせにい!!!」 ドクターがヒステリーを起こしているが気にしない。 なんとかするのがドクターの役目だ。 たまには人のために役に立て。 俺は1ミリもドクターには同情しないのだ。 「あの子達のためにいいことだろ」 内藤の冷たい一言でドクターの態度はかわる。 「そうだよね。子供達のためだよね。オレ、子供達を救うためにがんばるね」 ドクターはヌケヌケと言ってる。 内藤は知らないだけで、ドクターは今回の計画のために男の子達を買ってセックスして「仕込んで」いたのを俺は知ってる。 ユウタをだますために。 まあ、俺はそれを見逃している。 ドクターが買わなくても誰かが子供達を買っただろうし、子供達にそれを止めさせるには、いろんなことを変えなきゃいけないから、仕方ない、と思っているからだ。 だけど内藤は潔癖なので、そんなの認めるわけがなく、子供を買うような男は許さないからだ。 まあ、ドクターに関しては、最初から嫌いだけど。 「内藤くん、子供達のためにオレはがんばるからね」 内藤の手をつかんでブンブンふりながらドクターは言った。 直ぐに内藤に手を振り払われながら。 よく言う。 カウントCDを聞かせて始めるセックス再現シーンを見たら、このゲスが子供相手にどんなセックスをしたのかは良くわかる。 ドクターは相手が誰でも選ばずにセックス出来る男なのは分かっているけど。 この男は心底ゲスなのだ。 ユウタを騙すために使った、ゲイ嫌いな男をすっかり気に入って、また今日も呼び出しているのを俺は知ってる。 「男に犯されているのを認められないのに、それを止められなくて葛藤しながら犯されに来る所がたのしい」 内藤さえいなければ平然と言ってるからね。 俺はドクターを利用はするけどまったく好きじゃない。 「シブサワさんも協力してくれることになったしな」 俺はウキウキしていた。 シブサワさんが帰ってから、なぜだか俺を絶対に離さないと決めたらしい男が、俺をがっちり抱きしめたまま唸る。 シブサワさんが男はすっかり嫌いになったらしい。 なんでだ。 いい人???ではない。 でも、嫌いにはなれない人なのに。 シブサワさんが金貸しで、だからこそこの街でそれなりの力を持っているのはわかった。 資金繰りというのは、とても大切なことなのだ。 そして、シブサワさんには妙な魅力があり、それをこよ街は受け入れている。 わかる。 わかる気がする。 「お祭り、か」 内藤が珍しく嬉しそうに言った。 内藤も好きなのだ。 お祭りが。 この都会の街には神がいない。 祭りがないのだ。 毎日が祭りのようだとも言えるけど。 俺の街では夏には大きな祭りがあって、引いた山車で街の中を練り歩く。 学校にはいかない不良少年達が、祭りの鳴り物の稽古には真面目に参加して、笛や鐘を演奏し、まともに働かないような若者が祭りの準備は真面目にてつだう。 ヤクザもカタギも、普段は役に立たない人達も。 祭りだけはみんなで迎えるのだ。 夜遅くまで子供達はおきることをゆるされ、大人と夜店に向かうのだ。 沢山の提灯。 出店の色とりどりの水風船のヨーヨー 蛍光の1日で飽きる光るリング イカ焼きの匂い リンゴ飴 イチゴ飴 普段はいかがわしいと俺の街を嫌う人たちも、祭り時にはやってくる。 祭りの日、街はすべての人を迎え入れる。 山車に乗った神と共に。 街の外からも、あちこちの町内からの山車があつまり、街の中の巨大な鳥居がある神社で、全て山車があつまり、人々はそこ神を下ろすクライマックスまでをみんなで見守るのだ。 実際に神が降りてくるわけではないけど あれはなんか感動する。 そこまでの祭りじゃなくていい。 俺は子供達とこの街で祭りをしようと思った。 子供達と企画して、 街を清掃し、 夜店を開き、 山車を引くのだ。 そして、夜店の収益はシブサワさんがやってるホームレスの支援に寄付する。 子供達は普段は酒瓶やゴミを投げ、ゲロを吐いてる街を綺麗にして、祭りをつくりだし、ホームレスに償う。 祭りは楽しい。 祭りだけは楽しい。 俺も祭りが大好きで、その準備が大好きだったから知ってる。 俺は山車の屋根に登るの役目もやってたくらいの祭り好きなのだ。 子供達にあのたのしさを教えてやりたい。 学校に来ない子供達も、祭りにはきた。 祭りとはそういうものなのだ。 着飾るが好きな子供達が、好きなように着崩したゆかたで、自分を主張するのが目に見えるようだ。 喜んで動画や写真を撮るだろう。 自分達でつくった祭りの写真を。 嵌め撮りや、暴行の動画ではなく。 街中の掃除はホームレスの人たちと一緒にする。 ホームレスの人たちにはバイト代を出す。 シブサワさん達の支援団体と協力したい。 これを実現するための資金は。 シブサワさんに借りようかともおもったけど、シブサワさんはなりグレーな金貸しなので悩んでいると、 「オレの金はお前の金だ」 あっさり男が言ったので、解決した。 そういえば、この男金持ちだった。 何で稼いだ金かもわからないので、家賃として入れてくれているお金以外は遠慮してるんだけど、借りることにした。 夜店は儲かるのはわかってる。 俺の街でもやったことがあるからわかってる。 だから、男に金は返せる。 いや、やはり、俺は男の金を使うのには抵抗があるんだよ。 そこは。 だから返す。 収益からホームレスの支援に寄付して、子供達にバイト代をだしても、借りた分は返せるはずだ。 今回は儲け抜きのボランティアなので、シブサワさんから街の方々に(区とかそういう自治体ではない、やばい方の街の人達)に見のがして貰えるよう算段をつけてもらった。 これは。 祭りなのだ。 この街にはなかった、祭り。 本物の祭りなのだ。 山車には神は乗っていなくても構わない。 祭りというそのものが、街を1つにする神になる。 「祭りか、面白いな」 ナツが笑った。 ナツは祭りが始まる前に俺の街を出た。 俺はナツにも祭りをみせてやりたかった。 いつも、犬は俺がる乗る山車の横をついてきた。 俺と一緒に夜店も回った 内藤ともう眠ってばかりになった犬を抱えて祭りの街を歩いだりもした。 あれは犬の最後の夏で。 俺は犬から離れられなくて、その年の祭りの準備には参加しなかったのだった。 犬は俺の腕から、「悪くないな」と言ったように目を細めて祭りを眺めていたっけ。 「お前にも、祭りをみせてやりたいよ。来年は俺の街へ一緒に帰ろう。祭りに行こう」 俺を背後から強く抱きしめたままの男に言った。 ただ、そう思っただけだったのになぜか男が固まった。 「一緒に。帰っていいのか?」 深く低い声が掠れている。 「当たり前だろ?」 俺は意味がわからない。 父親や母親や妹に、どう紹介するか、は。 1年あるんだ、また考えるよう。 1年かけて準備しよう。 なんとか納得して貰わないと。 なんか、男が俺を万力のように締め付けてくる。 苦しいぞ。 顔が見えないけど、頭を俺の後頭部にグリグリ押し付けてくる。 なんだよ、可愛いな。 「・・・天然タラシだねぇ。これで無自覚だからねぇ」 ナツが呆れたように言って、何故か内藤がめちゃくちゃうなづいていた。 「祭りをするぞ、内藤。ナツ、・・・ナツにも祭りを見せてやるよ。そして、ドクターは祭りとユウタをはめる計画を結びつけてくれ」 俺の言葉に内藤とナツは頷き、ドクターは悲鳴をあげた 「シン、俺と祭りをしよう」 俺は目覚めて部屋のすみで丸くなってるシンに声をかけた。 「祭り?」 シンはまだ泣いていて、しゃくりあげながら言った。 「ちゃんとやり遂げてみせろ。おまえならできる。俺とやろう、俺がついてる」 俺はそれだけ言うと、本当に疲れたので目を閉じた。 おおきなケガこそなくても、打ち身や口のの中は切れてるし。 体力は限界だし。 俺を抱きしめる男が、何故だか震えていて、それがとても愛しかった

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