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祭り 6

街が賑わう。 いつもの快楽と愉しみと欲望を求めるようにではなく、ちゃんと祭りの匂いがしてる賑わいだ。 クチコミ、もしくはポスターのみで宣伝したのにも関わらず、人が集まってきている。 街にじゃない、祭り、に来てる。 これがハロウィンのバカ騒ぎなら、ただ騒ぎたいだけのどこか暴動寸前の気配がただようのだけど、祭だと何故か寛いだ雰囲気になるの何故だろう。 俺たちだけじゃなく、ちゃっかり便乗している屋台も出てきてて、公園を中心に賑わっていた。 店の前でその日だけのテイクアウトを売る店も。 商売のプロ達は目ざといのだ。 ちゃんと街の祭りになっていた。 子供達が飾ったノボリや提灯が揺れる。 提灯も手作りて、店の人たちの協力で中の電灯に電気をともせるから、夕方には綺麗に光るだろう。 紙に包まれた明かりの優しさはとても祭りらしくなる。 祭りは。 その中を歩くだけでも満たされるのだ。 この街ではあまり見かけない幼い子達も今日はこの街に現れている。 浴衣を着て、親につれられ、夜店にはしゃいでる。 親がこの街ではたらく子達なのだろう。 俺の街の幼かった俺たちのような。 高い声が響く。 祭りらしい。 街の幼い子達はやたらと髪型と衣装が凝っているのがいってるのが特徴なんだよな。 でも、これも愛なんだよな、愛。 その小さな子達の相手をしてるのは祭りを作り上げた通りの子供達だ。 幼い子達にヨーヨー掬いのアドバイスをしたり、話しかけたり。 笑い声が聞こえる。 幼い声とまだ大人ではない声。 普段は不機嫌そうに歩く人達が、笑って屋台のある公園に入ってくる この街は吹き溜まりの街だ。 ここに集まる人達がもといた場所にも、祭りはあったのだろう。 懐かしさに目を細めて、祭の匂いを吸い込んでいる。 毎日がバカ騒ぎの街に、でも今まで祭りはなかった。 子供達は祭りを呼び込んだのだ。 確かにこれは。 本物の祭だった。 ちゃんと神もいる。 日曜日の昼から始まった祭りは、にぎわっていた。 日曜日は夜のお店も休みが多いのに。 笑い声。 屋台の匂い。 鮮やかな原色のヨーヨー、スーパーボール、かき氷。 はしゃいだ声。 そして、そこにはどこかなつかしさが混じるざわめきが生まれる。 祭りがあった。 それは祭りだった。 日曜日の昼間はそれほどこの街には人はいないのだが今日は違った。 日曜日はいつもなら人が少いのだけど。 ここに呼び込んだ祭りを。 街の人達は楽しんでいた。 そして、祭りがあると知った人達が集まる。 祭りは人を集める。 そして、俺達が始めた祭りに集まる人達を、そして、この街を壊すためにユウタが動き始めていた。

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