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祭り 7

ソイツらは泣いていた。 その苦しみに嘘はなかった。 だから、ユウタは満足した。 いつものように宥め、優しくする必要がないのがいい。 ユウタは大嫌いだった。 自分のためになんでもする、まとわりついてくるあの子供達が。 なんて浅ましい。 自分で立てないから、誰かにしがみついて生きているおぞましく惨めな生き物。 そいつらを苦しめるたかった。 騙して裏切り、それを知らしめるのは確かに面白かった。 あの傷付いた顔は最高だった。 でも、ユウタも驚く程に、連中はマヌケふたまで。 騙されたことさえ、認めなかったのだ。 今でも自分を慕ってると思うと、ゲンナリする。 そういう意味では、賢くユウタが何かを見抜いて逃げ出したカナだけは感心する。 だからこそ、カナを殺すのは楽しかった。 ちゃんと恐れてくれたから。 でも、死んだらそこまで。 そこで苦しみが終わってしまう。 「・・・そういうのじゃないんだよな」 思わずユウタは声を出してしまった。 嘘だらけの共犯者が怪訝な顔をしたけど、まあ気にすることはない。 嘘に嘘を重ねてくる、でも、セックスのテクニックどけは一級のこの男をユウタは気にいっていた。 信用してはいない。 この男の目的もまだ分からないからだ。 だからと言って、それが楽しまない理由にはならない。 この男がくれるセックスも。 そして、この男が考えたテロをそいつらにさせるという遊びも。 そいつらを満足してユウタは見つめた。 ユウタが集めてきた10人。 わざわざ骨抜きにしなくてもいいからカンタンだった。 街でちょっと優しくしたらついてくるような人間を見つけるのはユウタの得意なことだ。 今回は子供じゃないということだけだ。 ユウタと街の子供達の関係は有名だ。 街の住人なら知っている。 ユウタとユウタの奴隷の通りの子供達のことを。 だから子供は避けた。 自分に足がつかないように。 そして、共犯者の助言に従って変装した。 ユウタは女装したのだ。 共犯者のメイクは完璧で、女にしかみえなかった。 実際の年より上な、綺麗な女。 これで連中が警察に捕まっても、彼らを最初に誘ったのは女で、ストリートの子供達に身体を売らせている少年、ユウタではない。 警察もユウタについては良く知っているからだ。 今もその女装姿で連中を眺めている。 連中は全てが終わった後、誰がきっかけになったのかを答えても、ユウタにたどり着くことはない。 女装のユウタが気に入った共犯者とこの姿でセックスをしたのも面白かったが、それは関係無い話だ。 そして、街を彷徨い見つけ出した。 大人の男女。 年齢は問わなかった。 20代から50代までの10人。 弱ってるところをみつけて、慰めて。 共犯者に引き渡した。 そして、共犯者が「カウントダウンCD」にハマらせて、カウントダウンCD無しではダメな身体になっている。 あれほど、ゲイギライだった男が、カウントダウンCDを聴いてからは、そのためにだったら何でもするようになっているから間違いない。 カウントダウンCDを「聴かせて」もらうためになら、男に突っ込まれあえぐことも辞さない。 あれほど嫌っていたユウタにさえ犯される有り様だ。 ユウタには嘘がわかる あのゲイ嫌いの男は「カウントダウンCD」のためなら何でもする。 そして、それを嫌悪している。 まあ、そのくせ狂ったように感じてもいるんだが。 だが、「カウントダウンCDの為に仕方く抱かれている」とその男が思っていることは、まちがいなかった。 わかるからだ。 ユウタは嘘が分かる。 分かるから支配できる。 だから、今ここにいる連中が泣いたり、苦悶の顔を浮かべているのが楽しくて仕方なかった。 全員、間違いなく、これに参加するのが嫌で。 でも、「自分のために」「そうする」「クズに成り下がる」 今日、この連中はこの街で大量殺人を行なう。 これは共犯者によれば「ビジネス」だ。 テロリストから多額の金が入るのだそうだ。 もちろんお金はもらう。 ユウタは金は嫌いじゃない。 全てが終わった後、テロ団体から犯行声明があるんだそうだ。 確かに、自分達の手を汚さないテロはテロリスト達には新しい武器になるだろう。 普通に街を歩いていた市民が、自分の意志ではないテロを行なうのだ。 予想も防御も難しいだろう。 そして、捕まえたところで、ソイツらは実行犯ではあっても、テロリストではないのだ。 ユウタは黒いロングワンビースをきて、黒いウェッグをつけて、これから人を殺す、人殺しに成り下がる連中を見つめていた。 泣いてる40過ぎの女。 呆然としたままの若い男。 ああ、こいつらが人間の屑に成るのか、そう思うととても楽しかった。 共犯者とまたしたくなった位だ。 先程まで、女装姿のワンピースをずりあげて、はげしく犯されたばかりだというのに。 全員、殺人なんかしたくなくて、全員苦しんでいて、でも、結局自分のために人間を殺すことになるのだと思ったら楽しくて楽しくてたまらなかった。 「お前らがすることは簡単だ。上手くやったら捕まらなくてすむぞ、だから上手くやれ。沢山人間を殺しても、捕まらないですむんだからな」 共犯者がこれから連中がすることを説明し始めた。 こいつらが捕まらないなら捕まらないで、いい。 沢山の人間を自分のために殺した人間として生きていくのだ。 それが、またいい。 開き直って心の底まで化け物に成り下がっても楽しいし、苦しんで生き続けてもたのしい。 自殺しても楽しいし。 どう転んでもユウタには楽しさしかない。 ユウタは繰り返すだけだ。 子供たちを奴隷にして。 またそれとは別にテロリストごっこをさせたりして。 今度は違う街でもいい。 ああ、なんて楽しい。 ユウタは無性にセックスしたかった。 連中を解放したら、共犯者としよう。 沢山の死んだ後にもまたよう。 祭りは始まっているだろう。 本来はまだ夜も来ていないため、そして日曜日に人は少ないはずのこの街に、子供達は人を集めてくれた。 沢山殺そう。 そして、子供達も。 ユウタは美しく微笑んでいた。 黒いワンピースに身を包み。 これから殺す人達のための喪服のまま、その死と苦しみを思ってほほえんでいた。

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