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祭り 15
「ちょっと待ってろ、手伝いに行く!!」
俺は携帯に叫ぶ。
お好み焼きの屋台から忙しいとヘルプを求められた。
忙しいのはどこも同じだが、お好み焼きは1番技術が必要な屋台で、お好み焼きがメジャーな地区出身のメグミだけが頼りだったりする。
食堂の息子として、料理への知識と技術にはそれなりのものがあると自認している俺は慌てて、かき氷の屋台からお好み焼きの屋台へと向かおうとした。
そのとたん、ジュースのケースを積み重ねた裏に引きずりこまれた。
驚かなかったのは、オレを背後から抱きしめる肌の熱さも、匂いも知っていたし、何よりその腕に刻まれた炎のせいだった。
男が俺を背後から羽交い締めにして、めちゃくちゃ俺の首筋の匂いを嗅いでいる。
唸りながら。
宥めるようにその髪を撫でた。
さすがに徹夜のようなことまでしているので、性的でなくても男が満足するまで触らせてやってはいない。
俺が足りなくなっているのはわかる。
エロい意味でもだろう。
俺だって、まあ、情けないない話だけど、コイツとエロいことしたい。
この男と獣みたいに番いたい。
ケツを掴んでガンガンに突かれたい。
もうそういう身体になっちゃってるのは認めざるを得ないんですよ。
だってコイツ可愛いし。
めちゃくちゃ気持ちいいし。
気持ちいいのって好きだし。
でも、今はダメだ。
今日はダメ。
男がなんか腹やら胸やら撫でだしたけど、ダメ。
でも、ちょっとその感触を味わってしまった。
「ヤりてえ・・・くそっ、可愛い・・・」
男の低い唸り声がして、胸の辺りをさすられ思わずピクリと震える身体に響く。
「ヤリたいのはこっちもだ」 と言うことはやめて、叱ることにする。
本音なんか言ったらそこら辺の物陰に押し倒されてヤラれる。
それが分かってるからだ。
俺がしたいなら男は絶対にする。
だって俺がシたいからだ。
それはどんなことよりも優先されるべきことなのだ。
恐ろしい。
「やめろ、ダメだ」
残念な気持ちを隠して男に言う。
男は渋々手を下ろす。
下ろす前に的確に服の上から乳首を摘みやがったので声がでてしまった。
「感じやすくて可愛いぜ・・・。奥まで入ってぶちまけたい」
そんなセリフを、低く深い声で囁くから腰が揺れそうになる。
が、俺の首筋に填めている男の頭を殴る。
「そんな場合じゃないだろ。お前は今日はユウタの見張りだろ!!」
男はユウタを見張り、何かの時には取り押さえることになっていた。
半グレ組織とユウタの両方を、類まれなるそのストーカー技術を駆使して見張ってるはずだったのだ。
この男にかかれば離れた場所からでもどんな動きも見逃さないはずだった。
怖いけど。
「そうだ。忘れてた。ユウタはやばいぞ。どうやら装置を入れ替えているじゃねーかな。たぶん全員じゃないがユウタは毒ガス発生装置を入れ替えているぞ、オレの推測だけどよ」
なんでもないことのように男は言った。
それよりも、俺の臭いを嗅ぐことに夢中だ。
触ったら怒られるから、臭いだけでも取り入れたいらしい。
てか。
おまえ、なんかサラリと凄いこと言ってないか?
「このままだったら、沢山の人間が死ぬじゃねーかな、まあ、間違いなく」
どうでも良さそうに男は言った。
そして、本当にどうでもいいのだともわかった。
この男は自分と俺さえ生きていればどうでもいいのだ。
そういう男なのだ。
俺が生きていれば男的には何の問題もないのだ。
それはいい、今更だからもう、いい。
少なくともそれが分かって報告しに来てくれただけいい。
大成長ともいえる。
沢山死んでから「そう言えば」と言い出す可能性もあったわけだからいい。
エライエライ。
でも、だ。
「どういうことか説明しろ!!」
俺は男に怒鳴った。
仕掛けた装置の半数から本物の毒ガスが出るだと???
それは。
なんとかしなければならない事態だった。
「ドクター!!ドクター!!大変だ!!!」
俺はドクターにも携帯で呼び出しをかける。
祭りは街に人を集めてしまった。
このままだと。
街はたいへんなことになる!!!
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