106 / 118
対決 2
「いいか、コイツらをさがす。この辺りの建物の屋上や、窓から下がよく見える10階以上の飲食店とか、とにかく通りがよく見えて、高い場所にコイツらはいる。さがせ!!」
俺は集めた子供たち、そうまだ出番に時間がある地車チームの子供たちに言った。
テロリスト10人の写真を子ども達のそれぞれの携帯に送っている。
祭を中断はできない。
ユウタが気付いて、もしからしたら装置を遠隔操作される可能性もある。
地車チームはこの通りにある店に協力を呼びかけていたりしてるのでウロウロしてもおかしくはない。
今日も朝から街の中を走り回っていたのだ。
テロリストたちはこの人通りがある通りのどこかに装置をとりつけることになっていた。
だから、捜す場所は限られているし、何より人が死ぬのを観るために絶対に現場の近くにいる、とドクターが断言した。
子供達には本当のことを言った。
毒ガスを撒くテロリストがいる、でも、警察に知らせて居る暇はない、と。
子ども達は笑ったがすぐに信じた。
男がそこにいたからだ。
こんな悪夢みたいな男がいたならなんでも信じる。
子供たちは都市伝説、燃えながら歩く男を目にして言葉を失っていた。
巨体。
燃えるようなタトゥー。
その目も炎そのもので、闇からきた悪魔そのものだったからだ。
女の子の中には男を見てマジで泣いた子もいる。
これが存在するなら、テロリストなんてリアリティありすぎる設定だ。
そう思ったのだと思う。
わかる。
マジわかる。
でも、可愛いんだそ。
俺には、ね。
シブサワさんにもユウタが毒ガス装置を仕掛けさせたことを告げた。
まあ、本当はドクターも、つまり俺も、噛んでるんだけど。そこは黙っておく。
シブサワさんとこの若いのが派遣されてきて、子ども達と一緒に探してくれることになった。
ドクターがシフサワさんがくれた、この辺りの店の名前まで入った建物の構造まで載った地図を確認する。
色々詳しすぎるその地図は合法的なものではないと、思う。
ドクターはどの辺に連中なら隠れるかのアタリをつけ始めていく。
ドクターは連中の心を読み、どこで隠れて見ようと思うのかをプロファイルしていく。
それを子ども達やシフサワさん達とこの若いモン達が確かめに走る。
男はユウタを見張りに消えた。
毒ガス散布の装置セット時間は地車が終わった直後の予定だった。
ユウタにバレないように地車が始まるまでには連中を捕まえて装置の場所をはかせなけば!!
地車が始まらないとユウタがあやしむ。
毒ガス装置の解除は男がなんとかするそうだ。
どうするのかはわからないが、なんとかできるならなんとかしてもらう!!
でも。
なんで、そんな装置の処理とかもお前できるんだよ??
男の過去はますます謎だらけだ。
だがいい。
それは、いい。
あいつは俺の男だ。
それだけでいい。
それより、見つけるしかない。
俺も子ども達と手分けして街の中を走り始めた。
「『ティルダ』のある雑居ビルの上と、非常階段をたしかめにいけ、屋上からと非常階段から通りが見えるし、表通りじゃないから隠れたいと思う場所だ」
ドクターがセクキャバの店名を言う。
通りを熟知している子ども達はすぐ分かる。
この通りにずっといたのだ。
この通りについては子ども達はとても詳しい。
俺も通いつめてすっかり詳しくなった。
子ども達と、ポスター貼りをお願いしにまわったしね。
「俺が行く!!」
グループ通話の電話にオレが答えて走り出す。
走るしかない。
走れ。
少しでも速く走って探していくしかない。
また違う場所をドクターがあげて、誰かがそこに向かう。
「あたしがいく!!」
ユキナだ。
死にたがって、リスカだらけのユキナ。
子ども達は街を守ろうとしていた。
子ども達は走っていた。
女の子も男の子も必死になって。
子ども達は。
この街を自分達の力で守ろうとしていた。
祭りを自分達の力で実現したように。
なんとかしなきゃ。
するんだ。
俺には子ども達の力がたよりだった。
そして。
子ども達は。
間違いなく頼りになったのだった。
「『茶トラ』のビルの非常階段に1人いた」
カズの声。
だるそうに咳止め薬ばっかり飲んでた子だった。
でも、今は最初に走った。
「シブサワさんとこの人達よろしく!!」
俺は頼む。
確保するのと、口を割らせるのは強面の方に頼んだ方がいい。
俺も走る。
見つけるんだ、
そしてユウタの企みを止めるんだ。
子ども達はもう。
無力ではなかった。
ともだちにシェアしよう!