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対決 5

彼女は素直に装置をセットした場所を教えてくれた。 オレを背中から抱き込んで離さない男に脅えながらも答えてくれたのだ。 男は俺の首筋に顔を埋めてずっと臭いを嗅いだり舐めたり噛んだりしてる。 どんなに怒っても離れないのだ。 とにかくドクターに彼女から聞いた装置の場所を連絡する。 回収に誰かが走る。 間に合いそうだ。 これで、装置は10個とも回収されたとドクターが教えてくれくれた。 「回収はしたけど、オレじゃこんなの解除出来ないし、その後どうすりゃいいのかもわかんねーよ!!」 ドクターが怒鳴ってる。 ここからは男の出番だ。 出番だぞ。 ・・・出番なはずなのだが 男が装置の解除と、その後の毒ガスのセットされた装置を「安全に、誰かの手に渡らないように、破棄」してくれることになってて、なんでそんなことができるのかも分からないけど、それは知ってはいけないお話しらしく、とにかくそうしてくれるはずなんだけど。 男が俺から離れようとはしない。 俺の首筋を噛み舐めたり、臭いを嗅いだりするのに忙しく、俺を背後から抱きしめて離さない 「早く来てくれ!!こんなもんオレにはどうにも出来ねぇよ!!」 ドクターがヒステリーを起こしているが男がうごく気配も無し。 「おい!!こら!!」 怒ってもダメ。 男には俺が死んだかもしれないことが、男なりにショックだったのだ。 怖かったのだ。 だから離れない。 男にしてみれば街で沢山の人間が死ぬことよりも俺が死ぬこと方が大きな問題で。 沢山の死など最初からどうだっていいのだ。 まあ、怖がらせたのだ。 そこにはホント、わるかったと思っているわけで。 いつも恐がらせているのはホント、申し訳なくて。 だが。 働いて貰わないといけない。 これは男にしかできないことなのだ。 「わかった!!装置の処理をしてくれたなら・・・何でもしてやる!!」 罪悪感からも、そんなことを言ってしまった。 「何デモ?」 男がいった。 なんでカタコトなんだよ。 「何デモ?何デモ???」 グルグルと唸りながら繰り返されて、あ、これ、しくったかもしれないと思った。 基本的に男は俺のためにセックスをしている。 そう、俺を喜ばせ、俺が他に行かないためにセックスをしている。 自分の為ではない。 そう、そうなのだ。 アレでも、あんなんでもそうなのだ。 喰われてるだけに見えてもそうなのだ。 つまり、男はしたいことがあってもそれを我慢してきたわけで。 俺のために。 でも、俺がしてもいいと言ったなら。 俺がいいなら。 男の理性のスイッチが壊れたらしい。 「何デモ・・・何デモ・・・」 うなされたように繰り返される。 男の顔を見上げた。 男はくいいるように俺をみていて、舌舐めずりして、唾を飲んだ。 何? 何をしたいの? なんで涎なの? 後悔したが、今更言える雰囲気じゃない。 「何デモ!!!何デモ!!!」 男は狂ったように叫んで駆け出していき、窓から飛び降りた。 止める間もなかった。 「ここ、6階だぞ」 従業員の人が言った。 真っ青になって。 「心配いらない。死なないよ、アイツは。心配なのは・・・何でもするって言ってしまった俺の方だ」 俺は頭を抱えた。 だが、これで男が向かった。 これで、まあ、装置の回収も処理も終わりだ。 「祭りを続行するぜ!!地車を始める!!」 俺は地車チームに告げた。 祭りを。 祭を終わらせなければならなかった。 そして、もう1つ。 のこっている。 対決が。

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