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第7話《序章》魔王が目覚める日⑦

(なにを言っている?)  この男は。 (俺は人質だ)  このアマクサ砦に軟禁されているのだぞ。  ずっと、ずっと、ずっと、ずっと…… (外に出られるわけがない) 「あなたを身請(みう)けします」 「馬鹿を言うな」 「私が決めたのです。戦利品として、私の物になりなさい」 「本国が許可しない。例え許可したとしても、俺はここを出る気はないッ!」 「おっと」  ビリリリリッ  頭上で電流がうなった。 「私の許しなく、頭をお上げにならぬよう。怪我しますよ」 (クッ)  唇を噛み締める。どんなに下衆だろうとも、立場はこいつの方が上だ。こいつの前で、俺は床を舐めて平伏すしかない。 「私は既婚者です。本国に妻がいる。ゆえに、あなたを妻として迎える事は不可能だ。ですので……」  ビリッリッ  電流の後ろで笑い声が不敵に響いた。 「あなたには宦官(かんがん)として、一生私に仕えてもらう」 「なにをッ」 「おっと、動かないでください。警棒が放電していますよ」  ビリリリィーッ 「どうせもう必要ないでしょう。散々抱き尽くされて雌になったあなたは、雄の本能も枯れてしまったでしょう」  手袋越しの冷たい掌が頬を撫でた。 「抱かれたいがため後ろの蜜穴をヒクヒクさせる事は出来ても、抱くために前の雄棒を勃起する事はできないのでしょう。だったら……」  取ってしまいましょう。 「股に生えた穢らわしい肉棒をきれいにして差し上げましょう。殿下、あなたには不要のものです。抱けない雄に、股に垂れ下がる竿は要らない」  もちろん玉も……  毛まできれいに剃りましょう。 「きれいになったあなたの体を本国でも毎晩、抱いてあげます」 「……嫌だ」 「拒否権はありません」  首を振る俺をガッと冷たい手が押さえ込んだ。 「(しとね)では、あんなに従順なのに」  フゥッと笑みが耳のひだを伝った。 「すぐに慣れますよ。殿下は淫乱でらっしゃるから……ほーら、もう勃ってきた。『淫乱』という言葉に反応しましたか。ほんとう性欲がお強くて、はしたない御方だ」  首を振って反抗する事さえも、強固な手の中に押さえ込まれる。 「でも、もうすぐ雄のオナニーもできなくなってしまうから、今のうちに楽しんでおいてください。何なら私の去った後、オナニーするといい。控えのモニターで、あなたの股が濡れる姿を眺めていますよ」  ヒュンッと頭の上で警棒が風を切った。  カツン、カツン、カツン、カツン……  軍靴が遠ざかる。 「大丈夫ですかっ」  声にハッとした瞬間、抱き起こされていた。 「ご無礼をお許しください」  逡巡する事なく、屈強な両腕が俺を抱いている。呆気にとられている俺の瞳に、藍色の眼差しが差し込んだ。 「どこか痛みますか」  モニターの兵士。シモン長官と戦術のやり取りをしていた男だ。

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