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第11話《Ⅰ章》傾城の悪魔①

『カタパルトデッキ射出』 『ウィンアラーム正常』 『仰角を55.65度に定めます』 『2時の方角にカタパルトデッキ固定』  始まる。 『controlをシモン長官に譲渡します』  遂に、始まった。  アマクサ砦にサイレンが鳴り響く。  ユーゴ シモンがアマクサ砦に赴任して秘密裏に開発を行っていた新型人型汎用機動兵器《ジェネラル》第三世代。  02-XG3  実戦で戦闘データの収集を行い、本国帰還の手土産にする気だ。  ハァッハァッハァッハァッ  ここからでは遠い。  もっと近くに。  ハァッハァッハァッハァッ  もっと高く。  あの新型の全容が見える場所まで。 「輝夜皇子、どちらへ」 「どけ」 「ここから先は立入禁止区域。自室にお戻りを」 「邪魔だ」 「あなた様とてなりませぬ」  守備兵が戦闘体勢をとった。 「俺に触れるかァッ!」  撃鉄を引く一喝に、守備兵に一瞬の躊躇が生まれた。 「龍の末裔・正統なる龍族皇族の私に触れる事は許されぬぞ!」  ガッ 「沈め」  小太刀の柄がみぞおちに入った。ずるずると、階段の下に気絶した兵士の体が崩れていく。 (こんな所で時間を費やしている暇はない)  脱走はしないさ。  逃げるために、ここに来たんじゃない。 (選んだんだ)  国盗(くにと)りだ。  まずは、その足がかりとしてアマクサ砦を奪う。  最上階の扉を開けた。  眩しい射光が網膜を刺した。  海の匂いがする。  波の音だ。  ゴゴゴゴゴォォオオオーッ!!  突如、地響きが掻き鳴らす。  大地が揺らぐ。  嵐が吹いた。  手をかざし、吹き荒れる風の中で目を見開く。 「あれは……」  太陽の(かげ)  日輪を喰らう翳だ。  漆黒の《ジェネラル》02-XG3  あれは………… 「俺の色だ」  その機体、俺が貰うぞ。

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