13 / 78

第13話《Ⅰ章》傾城の悪魔③

 クッ…… (基本戦術だぞ)  だが基本戦術ほどハマると厄介なものはない。  《ガニメデ》が三機揃えば、02-XG3の性能だけで突破は難しい。打つ手を間違えれば、取り返しのつかない事態も起こり得る。  今、《ガニメデ》の司令官は正攻法の基本戦術で攻めてきている。  中央に集めて、三機同時攻撃。 (これを阻止するには)  風が吹いた。  陸から空へ。  舞い上がった風が、脚を、腕を、胸を、首を駆け上がって、雲間に昇る。  雲が太陽を隠した。  《ガニメデ》の駆動音だ。  近づいてくる。  戦局は機体性能で勝る02-XG3に分がある。《ガニメデ》単体では02-XG3を落とせない。ならば攻城戦用に両翼に潜伏させていた二機の《ガニメデ》を集結させて……  パンッ  打ち鳴らした拍手が、空の翳りに高らかと響いた。  02-XG3を…… 「一気に叩く」  ならば当然、《ガニメデ》の攻勢に対抗する戦術は…… 「おいっ」  驚愕の声がついて出た。 「なにを考えているッ」  02-XG3が《ガニメデ》から離れた。 「ここは各個撃破だ!」  中央の《ガニメデ》を確実に仕留め、左右どちらかに旋回する。《ガニメデ》は足が遅い。一対一の戦闘に持ち込んで、追いつかれる前に撃破すれば問題ない。  なのに、あいつはァァッ! 「止まれ!02-XG3!」  更に距離をとった。今更、臆病風にでも吹かれたか。 (《ガニメデ》の獲物はレーザー砲だ)  離れれば離れるほど、敵の照準圏内だ。狙い撃たれるぞ。  しかも後退した、その場所は。 「馬鹿かッ!」  戦闘車両隊が布陣する場所だ。  援護射撃を受けたければ、逆だ。02-XG3が敵の目を引き付けて、その隙に戦闘車両隊の一斉射撃を行うべきだろう。  そんな事も分からないのかッ (今《ガニメデ》に砲撃されたら)  敵司令官は見逃さない。  肩のレーザー砲が青く光った。 (チャージが完了した)  一瞬。  ブォオオオオォォォオオーッ!!  閃光が轟音を巻き上げた。  黒煙と土煙と焦土の香りが鼻孔を突いた。 「味方が……全滅だ」  えぐられた大地。凪ぎ払われた焦げ臭い砂の上に戦闘車両隊の影はない。レーザー砲の光が味方部隊を全て葬り去った。  02-XG3は辛うじて、機体性能で避けた。  しかし、左脚が火花を噴き上げている。あの脚ではもう走れない。勝機である機動力を失った。  代償は大きい。  どうする?  どうすればいい?  クゥィィィーン  クゥィィィーン  二つの機械音が同時に止まった。  右から一機、左にも一機。  正面に一機。 (囲まれた)  遂にこの地に、三機の《ガニメデ》が集結してしまった。

ともだちにシェアしよう!