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第14話《Ⅰ章》傾城の悪魔④
勝てる戦が一気に絶対絶命の窮地に陥った。
どこで間違えた?
《ガニメデ》一機なら機体性能で勝る02-XG3で撃破できる。
二機が右翼と左翼に潜伏している事も読んでいた。各個撃破で問題なく鎮圧できた筈だ。
(なのに何だ?)
この醜態は……
味方軍が壊滅。
02-XG3も左脚に損傷を負い、機動力はないに等しい。
(俺は何を間違えた?)
戦局は一方的だ。
王手を取られた。
もしも《ガニメデ》三機が同時にレーザー砲を放てば、負ける。
ゆえに、確実に……
相手はレーザー砲で息の根を止めに来る。俺が敵司令官ならば、そうするからだ。
「《ガニメデ》如きがァッ!」
レーザー砲チャージまで、あと何分。いや、何秒だ。恐らく60秒もないだろう。あと60秒足らずで、この戦いは幕となる。
(敗北するだと……)
「ふざけるなぁッ!」
俺は間違っていない。
何も間違えてない。
そもそも間違いなのは、あの男がパイロットという事だ。
あの男さえ、パイロットでなければ。
あの男さえ、02-XG3に搭乗しなければ。
ユーゴ シモン
お前のせいで。
眼帯の下の左眼を押さえた。
見通せなかった俺の失態だ。あの男が搭乗すると言った時点で止めるべきだった。何としてでも。
チャージレベルが60パーセントを越えた。レーザー砲の口から光が見える。この状態で撃ってくるか。最大出力でなくともレーザーは撃てる。
「なにッ」
あの男は!
(この期に及んで何をしている)
一瞬、02-XG3の背中が光った。
脱出ポッドだ。
シモンが02-XG3を捨てて、脱出を図っている。
「味方を壊滅させておいて、まだ命が惜しいか!」
つくづく救いようのない男だ。
脱出ポッドで自分だけ生き延びようだなんて。救えない。
いや、そうじゃない。
味方部隊は救えなかったが、自分の命は救えるんだ。
(そうだ)
それだ。
ククククク……
フハハハハアーッ!!
(この戦、まだ勝機が残っているぞ)
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