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第21話《Ⅰ章》傾城の悪魔⑪

「本機は間もなく着陸する。衝撃に備えろ」  ズガガガゴゴゴォォォー!!  砂塵が舞い上がる。  飛行機能のない《ジェネラル》だ。着陸のユニット装備はない。 (見事な胴体着陸だな)  砂塵が晴れるのを待つ間もなく、すぐさま手元のタブレットを見た。小さな損傷はあるものの、機動核中枢に深刻なダメージはない。 (ここまで戦術が上手くいくとは思わなかった)  シモンの運によるところも大きい。 (認めざるを得まい)  今回の作戦の功労者はユーゴ シモンだ。  そしてこの戦術が成功するか否かは、ここからだ。 (着地の砂塵で敵に位置を知らせてしまっている)  機動力の低い《ガニメデ》とはいっても、すぐに追いついてくる。  ツッ  無線のランプが光った。  これが最後の指示だ。 「02-XG3、K9(ケーナイン)地点に移動しろ」 『本陣と逆方向だ』 「そうだ」 『02-XG3に武器装備はないのだぞ。……まさか』  ツッ  ランプが点滅する。 『私を(おとり)にするのか。《ガニメデ》が私を攻撃している間に砦の陣形を立て直し、私もろとも《ガニメデ》に砲弾を浴びせてッ』  無線ランプの青と、タブレットの赤く光る数字が混ざり合う。 『私に玉砕しろというのかァッ!』  タブレットの数字が警告する。《ガニメデ》が迫っている。  もうこの作戦は止められない。  賽は投げられた。

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