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第23話《Ⅰ章》傾城の悪魔⑬
勝利への布石は揃った。
K9
ここが《ガニメデ》の墓場だ。
拳を振り上げる。風の中に。
潮風に袖がはためいた。
ゴゴゴゴゴオー
大地が蠢く。
ゴゴゴゴゴオォォー
地鳴りだ。地面が振動する。
『なんだっ、どうした?地震か?』
シモン、黙って見ていろ。
「大地を揺るがすこの共振 は、勝利の序曲だ」
ゴゴゴゴゴオォォオオオゥオー!!
砂がうねる。
大地が叫ぶ。共鳴し、地響きが走る。
(《ガニメデ》レーザー砲射程圏内)
敵が02-XG3を攻撃可能であると同時に、こちらもお前達への反撃を可能にする距離だ。
「捕らえたぞ!」
ガガガガガガゴゴガガガアアァアアーッ!!
大地が上下にうねる。
地面が波打つ。
まるで液体のように。
遥か先K9の振動が砦をも揺るがす。
(……切り札は02-XG3じゃない)
「これが俺の勝利への切り札だ」
砂の柱が《ガニメデ》を噛み砕いた。
空に伸びる褐色の柱に《ガニメデ》が飲み込まれる。
『これは……』
ツゥゥゥー
無線の声が色を失っている。
『なぜ、これの存在を知っているんだ……』
そいつは、砂の柱なんかじゃない。
そいつは…………
「Jwvep/640c8-2」
『秘匿コード!』
「使わせてもらったよ。ただし解除条件は、本国正規兵でコードを入力する事」
だから、あの兵士を使った。
司令室で俺の怪我を治療しようとしてきた本国正規兵だ。薬を入手するコードだと偽って……
「お前の部下を利用した」
クッ……
俯いた唇から笑みが零れた。
「良かったじゃないか。お前の研究の成果が、お前自身を救った。だが、この事態が諸外国に知れれば、お前は社会的地位を抹殺される」
『待て。違うんだッ!私は本国からの命令で仕方なく!』
「もう遅い!」
吹き飛ばされた《ガニメデ》の残骸が空から降ってきた。
地響きを立てて、バラバラに崩れ落ちる。
「悪魔を野に放ってしまったのだから」
砂の柱が閃光を放つ。
義眼の光だ。
そう……
あれは、砂の柱ではない。
あの砂は生きている。
砂の中に潜んで生きている。
凶悪な鳴き声が熱砂を震わせた。
人工的に遺伝子を変異させて生み出した禁忌
「生物兵器・砂蟲 」
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