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第29話《Ⅱ章》月輪と太陽②
勝利の条件は、敵増援部隊がここに到着するまでにアマクサ砦総司令シモンの身柄を押さえること。
(できるか)
敵に俺達の居場所は知られている。
今も次々にこの場所めがけて増援が送られている。ここから脱出するのは絶望的である。
だが、それでも……
起こすしかあるまい。
「アマクサの奇跡を」
ツッ
「G-3」
(無線を入れた)
この男、誰と通信している?
「レーザー砲の照準、敵《ジェネラル》」
レーザー砲と言った。
(《ガニメデ》をアマクサに送り込んだのは、この男だ)
「構いません。撃てなくても十分脅しになります」
《ガニメデ》は遠隔操作の無人《フラッグ》。別の場所にいるパイロットと通信している。
脚は潰している。《ガニメデ》は立ち上がれない。
しかし。
《ガニメデ》が動いた!
G-3と呼ばれた機体がガシャガシャン、鈍くきしむ音を轟かせ、背中のレーザー砲が02-XG3を捕らえた。
ツッ
無線だ。
『《ガニメデ》が動いたぞ!この機体、死んだのではなかったのかッ』
(シモン……)
『私を助けなさい!早く!殿下。私はどうすればいい?』
(俺に助けを求めるだと?)
『早く!レーザー砲を撃ってくる。これまでの事は不問に処します。なに、ほんの痴話喧嘩みたいなものでしょう』
「何を言うんだ、今更!」
ピピッ、ピーッ
『おぉ、まだ動く。機動が生きている。私は後退します。その間に策を立てなさい。私を助ける戦術を、いいですね』
ピピピーッ
(ダメだ)
「そこはっ」
シモ……
ツゥーッ
無線が切られた。
髪を梳いて、そっと割った手は……
「あなたが聞く必要はありません」
瑠月……
「彼は私達の敵です」
ガガゴォーン
破裂音に似た機械の悲鳴が上がった。
(この男は知っている)
「後退した場所は、砂に隠れた窪地です」
窪地にはまり、押し寄せてくる砂の重みで動けない。不完全な02-XG3の機動力では脱出不可能だ。
(この男は……)
「絡めとりましたよ」
アマクサの地の利まで計算した。
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