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第36話《Ⅱ章》月輪と太陽⑨

「瑠月、問うのは一度だけだ。お前は何を隠している」 「言えません。殿下であっても、どうかご容赦下さい」 「殿下ではない。お前の主だ」 「それでも……です」  お互い顔は見ない。  見たところで何かが変わる筈はない。 「問うのは一度だけだと言った。だが」  ザッ  モニターが微かな異変を拾った。  小さな物音だが、しかし。  爆薬の仕掛けられた音だ。 「殿下!」  大音響が轟いた。  《クロノス》の中。多少の爆発で主要システムが破損する事はないが。 (さすがに驚いたな)  衝撃から身を守るように、瑠月が俺を抱きしめている。 「問う必要はなくなった」  瑠月…… 「お前は嘘をついている」  お前はもう…… 「帝国宰相ではないな」

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