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第40話《Ⅱ章》月輪と太陽⑬
光が大地を蹴った。
「《クロノス》絶対空域より上昇します」
飛んだ。
蒼穹に翼が翔ける。
そして、このタイミングは。
「衝撃に備えて下さい」
背後から瑠月の腕に抱きしめられた。
「衝撃波、来ます」
瑠月の腕の中で、足元から突き上げる振動が轟く。機体が揺れる。
「相殺、成功です」
《クロノス》が空に羽ばたいた風圧で、爆発を消した。
特殊工作部隊の放った爆雷が消滅する。
「死者は?」
「モニター確認。生体反応ロストゼロです」
吹き飛んだのは地面だけだ。
ぽっかり空いたクレーターの周りをβ達が囲んでいる。
「おそらく、戦意は喪失したでしょう」
「あぁ」
βの予測を超えた。
彼らの計算を上回る可能性はあった。だが絶対ではない。
(しかし、可能性を実現するのがαだ)
人は己が予測を遥かに上回る結果を目の当たりにした時。
驚愕し、畏怖し、平伏す。
「跪け、β」
これがαのカリスマだ。
「通信をオープンチャンネルに切り替えます」
青い通信ランプが点滅した。
『中華大帝国・烈各部隊に告げる。私は帝国丞相 ・瑠月である』
(この男、名乗った)
命を狙われているのに。
『私の目的は停戦だ。武器を置いた者へは攻撃を加えない』
眼下の部隊の動きが止まった。
いや、止めたんだ。
(帝国丞相という名が)
『もう一度告げる。武器を置いた者を攻撃しない。万一、他部隊より攻撃を受けるような事があれば私が保護する。帝国宰相の名と武力を持って、君達の身の安全を保障する。私の目的は停戦だ』
帝国軍全部隊……
『武器を地面に置きなさい』
β達が……
武器を捨てた。
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