48 / 78

第48話《Ⅲ章》斜陽①

 それでもだ。  それでも、外に出なければ。 (ここは、危険だ)  地下資源の過剰搾取の結果、土壌はやせ細り、アマクサの至る所で砂地化している。  シモンの機体は砂地深くにはまって、動けない。 「中からこじ開けろ。救助する」 『分かった』 「輝夜様」  突如けたたましい閃光が鳴った。非常アラームだ。コックピットのランプが点滅する。 「生体反応確認。真下です」 「行くぞ。フルスロットルだ」 「未確認生物の方が速い」 「そんなっ」 (《クロノス》を追い越しただと)  どんなスピードをしてるんだ。 「未確認生物、地表に上ってきます」  ドォォオーンッ!!  砂が噴いた。  真っ黒に。空を黒く染めるほどに。  視界が覆われる。何も見えない。 「座標は?」 「02−XG3の位置、やや手前です」  間違いない。 (02−XG3が狙われている)  だが、なぜ?  己が意志で02−XG3を付け狙う? 《ジェネラル》という理由なら《クロノス》だって同じ標的になり得る筈だ。 (なぜ、02−XG3なんだ?) 「どうなっているッ?」  おかしい。  砂柱はなぜ、沈まない。 「砂柱はなぜ、まだ立っている」  滝のように。  空にそびえる砂柱から、流砂が零れ落ちている。  カタっと指が止まった。 「そういう事ですか……」 「瑠月?」 「02−XG3の座標位置は『巣』です。砂地での攻防、そして決定打は《ジェネラル》の無謀な脱出操作です。《ジェネラル》が『巣』を荒らしたせいで、『巣』の(ぬし)を怒らせたんです」 「『巣』の主なんて聞いていない」 「だが事実、私達は今、目にしています」  あの砂柱…… 「制御ができず廃棄したのでしょう。しかし、したたかな生命力が生物を生かしていたのです。あれは、帝国軍の産物です」  砂の柱がギラリと光った。 (鱗!) 「あれは……」  (ミズチ)

ともだちにシェアしよう!