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第50話《Ⅱ章》斜陽③

「どうしたっ?02−XG3」  緊急信号だ。 「02−XG3!応答しろ」  コクピットにアラームが鳴り響く。02−XG3で何が起こっている。 「シモン!」  ノイズが邪魔をする。通信は繋がっているのに、声が聞こえない。 「瑠月、フライトモード最大出力」 「輝夜様、何をっ」 「決まっている。02−XG3を救助する」 「危険です」 「分かっている」  異常な事態が目の前で起こっている。  02−XG3が応答しない。  これはただの通信機器不良ではないと、本能が直感する。 「ご再考を。輝夜様の身が危険にさらされます」 「俺の目的は02−XG3の奪取だ。あれを失うわけにはいかない」 「愚策です。《クロノス》に蛟に対抗できる装備はありません」 「だが《クロノス》でしかできない」 「丸裸で敵に突入するなど無謀の極みです」  フッ……  唇が薄く微笑んだ。 「瑠月、お前は間違っているぞ。武器ならもう手に入れている」 「何を言って……」  そう言いかけた声が止まった。 「まさか、あなたは……そういう事ですか」 「一撃で仕留めるぞ」 「御意」  《クロノス》が飛んだ。  高く、もっと高く。太陽の光を受けて、機体が金に輝く。 (さすがは帝国宰相だ)  伝える前に作戦を理解している。 「最速最短で蛟と距離を詰め、Rk−3ポイントで急降下します」 「あぁ」  Rk−3 (そこは……)  重力が加速を増した。  体に負荷がのしかかる。 「グッ」  メリッと骨が軋む。重力の負荷が痛い。 「輝夜様ッ」 「構わん。続けろ」  目標地点は目の前だ。 (ここは!)  巣の真上だ。即ち。  02−XG3がいる。 「コントロールキーを打ち込め」 「はっ」  解析は完了している。 「《クロノス》、02−XG3と同期しました」 「よし!」  手を伸ばす。  もっと……もっとだ。 「開けェェーッ!」  閃光が走った。 「稼働確認しました」  装備のない《クロノス》の武器は、02−XG3に装備された…… 「この剣だ」  一撃必殺。  刃を、蛟に。

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